「ミ……え? なんで……」
《なんで? あんたのせいじゃない! こんな夜中にあんなメール……びっくりするでしょ! もっと時間考えてよ!!》

どうやら、彼女は相当怒っているようだ。
まさかメールで起こしたのか……とも思ったが、パソコンの方に送ったから、それは無いだろう。
となると。

「……夜更かしはお肌の大敵、じゃなかったのか?」
《寝てたわよ。けど、すこぶる腹立たしい夢のおかげで、一気に目が覚めちゃったの》

ムスッとするミリアリアは、ディアッカ同様、眠いのに眠れない状態にいるようだ。
眠いのに眠れないから――かなり気が立っている。

「腹立たしい夢ねえ……どんなのさ」
《あんたに言う必要、無いと思う》
「必要とかって話じゃなくて」

ディアッカは、とても甘えた声で頼んでみた。

「ミリアリアの夢の内容、知りたいな〜」
《……あんたは知らない方が良いと思う》

そんな風に言われると、人間、もっと知りたくなるもので。


「なんで? もしかして、俺以外の男とイチャつく夢?」


的外れなこと言って、怒らせて、向こうから暴露させる……そんなつもりで言ったのだが、ミリアリアから否定の言葉は聞かれない。
妙な沈黙が訪れる。

「…………えーと……マジ?」
《ちょっと違う》
「じゃ、どんな夢だよ」
《ただの悪夢よ》

意を決し、ミリアリアは告げる。



《あんたが私を、忘れる夢》



心臓の中心が、すうっと音を立てた。



――俺がミリィを、忘れる夢――?



《……ほら、知らない方が良かったでしょ?》
「や、聞いて良かった」

申し訳無さそうに言うミリアリアを他所に、なんだかディアッカは嬉しくなっていた。

「俺もさ……同じ夢見たんだわ。ミリアリアが俺を、忘れる夢」
《私が、あんたを?》
「そ。綺麗さっぱり」

口に出すと、余計虚しさがこみ上げてきた。
現実に起こったら、正気を保てないほどの悪夢だけど――


《……なかなか高いシンクロ率ね》
「そうそう。やっぱ俺ら、波長合ってんだわ」


悪夢を、ミリアリアが笑い飛ばさせてくれた。


だから、彼女はすごい。
思いもよらない所で、思わぬ力をくれる。

「あー……なんか、良く眠れそうな気がしてきた」
《そ、良かったわね》
「素っ気無いね〜。ミリアリアは? まだ寝たくない人??」
《……多分、いま目をつぶったら、三秒で寝れるわ》

小さく笑い声が生まれる。
今なら、とても良い夢が見られそうで。


きっとどこかで繋がってるから、二人は同じ夢を見た。
きっと思い合う存在だから、片方が悪夢の半分を引き取った。


そう思うと、なんだかとても、幸せな気分になれた――





-end-

結びに一言
似たような夢って……運命感じます(^^;

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