「素直に言えるよ……綺麗だって」

言って――ディアッカはミリアリアを見た。
そしてもう一度。

「……ほんと、綺麗だな」
「な、なによ……」

目を細め、しみじみと言うディアッカを前に、彼女は一歩、足を引いた。
顔を少し赤らめたところを見ると、言葉の真意をちゃんと汲み取ったようである。
とどめを刺すように、ディアッカは言い放った。

「ミリアリア、きれえ」
「ば――かなこと言ってんじゃないわよ!!」
「馬鹿なことって……」

立ち上がりながら嘆息をつくディアッカは、ズボンについた汚れをを見つけ、手でほろった。しかし白いズボンについたホコリは、中々落ちてくれない。

「そんな格好で座るから」
「黒だったら目立たないのになー」
「黒でも目立つ! それに、あんたが黒着たら、私も黒いの着なくちゃダメじゃない!!」
「黒嫌い?」
「嫌いじゃないけど、小さい頃から『白いドレス』って決めてたんだから。人の夢、汚しやすいって一言で取り上げないでよ!!」
「……その割に、場所はここなんだな」

げんなりと、ディアッカは自分の立つ甲板を確かめる。
数々戦場を潜り抜けてきた、歴戦の艦――アークエンジェル。
不釣合いだと、ディアッカは思った。
だが――ミリアリアは首を振る。

「だって……ここは、たくさんの思い出の詰まった場所だし」

愛しそうに、彼女はアークエンジェルを見上げる。

「良い思い出も、悪い思い出も、たくさん……たくさん残ってる場所。私とディアッカが出会ったのも、この船があったから。
 そう考えたら、ここしかないじゃない」

多くの悲しみ、多くの嘆き、そして多くの出会い……全てはここから始まったのだから。
ならば、これから始まる新たな生活の第一歩も、彼女はこの戦艦にしたかった。

「だな」

その思いは、ディアッカも同じ。
ミリアリアに出会えたアークエンジェルに感謝して……最初の一歩をこの船に決めた。

「しっかし、よくこんな事に使用許可出したよなー、姫さんも」
「私も、まさかカガリが、あんなりあっさり使用許可くれるとは思わなかったわ」

許可だけではなく、アークエンジェル起動の費用も全額出してくれると言うのだから、彼女の懐の深さには頭が下がる。

「じゃ、行きますか」
「そうね」

お互いの意志を確認するよう、二人は瞳を交えた。
ディアッカがミリアリアに手を差し出して――彼女もまた、手を重ねる。

少々、照れ笑いなど零しながら。

ミリアリアの足が、裾の長いドレスにもつれないよう、ディアッカはゆっくりと歩き出す。

白いタキシードと、白いドレス。
純白に身を包んだ二人は、静かに儀式の場へと向かった。


みんなの待つ祭壇へ。
変わらぬ愛を誓う場へ――




-end-

結びに一言
簡単に言えば…運命終了後、AAで結婚式を挙げるディアミリ(大笑)

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