「今更だけど、お前不器用すぎ……」
「うるさいわねっ!」

顔を真っ赤にして、ミリアリアは叫んだ。
彼女の手の中にある皮の剥かれたジャガイモは……まあ、見るも無残な姿で。
……実がほとんど、皮とともに削り取られている。

「大体、ディアッカの方がおかしいのよ! 何でそんなに、料理出来るの?!」
「そりゃあ俺、天才的に器用だからね〜」

余裕綽々に言うディアッカがまたムカつく。

「どーせ私は、天才的に不器用よ」

ぷい、とミリアリアは頬を膨らませ、ミリアリアは新しいジャガイモと取っ組み合いを始めた。
一方、慎重に包丁を入れる後姿を眺めるディアッカからは、堪えきれない笑いが小さくもれ出してしまう。

「そんなに可笑しい? 私の不器用っぷり」

半分しか皮を剥いてないのに、手にするジャガイモは既にボロボロで、絶対に「うん」と言うと思っていた。しかしミリアリアの予想に反し、ディアッカは――

「だってさ、俺は器用でミリアリアは不器用。すっげーバランス取れてるなーって思ったらさ、嬉しくなっちゃって」
「バランス……って言うの? それ」
「言ういう。そーだなー、鷹のおっさん辺りに話したら、とっても良いバランスの取れた恋人同士って言ってくれるわ」
「こ――」
「――ほら、包丁はこう」

真っ赤になり、どうせ、照れて恋人否定発言でもしようとしたであろうミリアリアを牽制すべく、ディアッカはすぐさま次の行動に出た。
後ろから彼女を包み込むように身体をくっつけ、手を添える。


自分の右手を、ミリアリアの右手に。
自分の左手を、ミリアリアの左手に。


そしてまず、彼女に正しい包丁の持ち方を教える。


「柄はそんな、しっかり握っちゃ駄目。皮を剥く時はこう、こんな風に……」
「…………」

すぐ傍にあるディアッカの真剣な表情に、ミリアリアの胸は高鳴った。あまり見れない、真面目な顔のディアッカを目前に……思わず見惚れてしまう。
すると、ミリアリアの視線に気付いたのか、ディアッカは顔を崩して言った。

「惚れ直した?」
「まさか」



――惚れ直してる真っ最中です――



――と素直に認めるのが悔しくて、否定はしてみるけれど。


「え? でも、真っ赤じゃん」
「うるさいなあ、もうっ!!」

どんなに違うと言ってみても、顔の火照りは止まらなかった。




-end-

結びに一言
何となく、ミリィさんは料理下手ネタで(苦笑)
……この後のディアッカさん、うきうきしながら教えてそう……

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