ミリアリアが呆れ果てていると、彼の――ディアッカの口が開いた。
大きく息を吸って。



「そんなわけでミリアリア――ハッピーバースディ」



ばさっ。


ディアッカが後ろに回していた手を繰り出すと、視界一面に『紅』が広がった。
それは、バラの『紅』。
大量の――バラの花束。

「さすがに、バラの花100本とまではいかないけど、まあ、そこは大目に見てもらって――って、ミリアリア?!」

流暢に語ろうとしていたディアッカが驚く。
ミリアリアの頬に、涙が伝っていて。

「え? 泣くほど感動した?」
「呆れてるのよ」

涙を服の袖で拭いながら、ミリアリアは続ける。


「こんな――……こんな事で嬉しいって思う自分に、呆れてるだけよ」
「素直じゃないねえ」


堪えようとしても、どうにも笑いがこみ上げてくる。
こんな所で意地を張らなくても……いや、素直な感想とも言えるか。一応「嬉しい」とは言っているのだから。

彼は両の手で白い頬を包み、青い瞳を直に見下ろす。


自分しか映らない水晶球を。


「会いたいなら、会いたいって言えよ」
「……あんたに面と向かって言うの、何かこう……胃がムカムカするから嫌」
「なんだそりゃ」

思わずディアッカは吹き出した。
久々に会うミリアリアは、昔と全く変わらない。
邪険にされてるのに、何故だか嬉しくなってしまう。

栗色の髪をなぞり、小柄な体を腕におさめ、彼は改めて囁いた。


「誕生日、おめでとう」


そして優しいキスをした――




-end-

結びに一言
…………ベタベタすぎた可能性・大…………

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