秘密の二人





光注ぐ窓辺の席に、イザークとミリアリアは居た。カップを片手に談笑する姿は、仲睦まじい恋人同士のようにも見える。


――傍目から見れば。


「……ふぅん。それで、結局どうなったの?」
「ディアッカが機体を暴走させたフリして、教官達の目を自分に向けさせて……俺とアスランの決闘はお開きだ」


それは、士官学生時代の出来事――

ゆえあって――というか、意見の食い違いと日頃のいざこざから険悪差加減が限界を超えてしまい、晴れてイザークとアスランは、拳一つの大乱闘をする羽目になった。
夜の演習場で、二人きり。そもそも士官生同士の喧嘩はご法度なため、使用許可も取っていない。そんな所に見回りがやって来て――

「さすがディアッカ。自分の身を犠牲にしてまで、あんた達を守ったのね」
「俺達は親友だからな」

実際は教官達の目を欺いた見返りに、昼食おごらされたり、試験の山をはらさせられたり、グループ演習での個人点数をディアッカ高めに配分させられたり……まあ色々させられたが、そこら辺は省いておく。
すると今度は、ミリアリアが、

「そういえば……私、夕飯作りに失敗したことあってね」
「料理に失敗?」
「そ。すごーく焦げちゃって、だから食べなくて良いって言ってるのに、ディアッカってば……全部食べちゃって」
「……それがどうした?」
「やっぱ男たるもの、愛する女性の作る物は、残さず全部食べれる人種なのね〜って話」
「……………………」

眉間にしわをガンガン寄せながら、イザークはカップを静かに置く。小刻みに震える手から、心穏やかでない様子がはっきり見て取れた。
それは、ミリアリアも同じである。笑顔を作ってはいるが、好意から作られるものではない。

二人は一呼吸つくと、同時に手を、ポケットに入れた。
そして、一枚の写真をテーブルの上に滑らせる。



「三年前の寝ぼけたディアッカ」



先攻=イザーク・ジュール。



「三日前の居眠りディアッカ」



後攻=ミリアリア・ハウ。



二人は、提示される写真を見て――顔をしかめた。


イザークが出したのは、幼さの残る士官生時代の物で、青いストライプのパジャマを纏い、布団を抱えて爆眠するディアッカの姿が写っている。
同室だったイザークが、ディアッカへの――半ば嫌がらせとして撮った写真だ。

対するミリアリアは、旬も旬、わずか三日前に撮られたディアッカの写真である。寝るベッド、そして寝巻きが緑色に変わったのと幼さの抜けた顔つき以外、イザークの写真とあまり変わりはない。



寝姿対決……ドロー。



二人はいつも、こうして張り合っていた。



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