一方で、ミリアリアは怪訝な顔をしていた。


〈別に、返事を聞きに来たわけじゃないのよね……?〉


彼は『確認』と言っている。
きっと、『左手の薬指』だけで伝わったかどうか、心配になったのだろうと読み取った。


〈なら、もうちょっと分かりやすく言ってきなさいよ……〉


でも、そんな姿にすら、愛しさを感じてしまう。
少し意地悪したくなるほどに。

「どういう意味よ」
「え?」
「言ってみなさいよ。コレの意味」

言ってミリアリアは、指輪をかざす。
昨夜、彼の渡したシルバーリングを。

「…………」

ごくり、とディアッカは息を呑んだ。ある種、不発に終わった某申し込みを、もう一度出来るチャンスなのだから。

でも。


――良い言葉が出てこない――


〈何でこんな時に、頭真っ白になるんだよ!!〉


昨日もそうだった。だから、あんな言葉でおさまってしまった。

なら――


〈……俺が、伝えたいのは……〉


飾ろうとせず、格好つけようとせず。

――素直に伝えるだけで、良いのかもしれない。


思うことを。
願うことを。



「ケッコン、しよ」



ごくシンプルに、彼は紡いだ。

「…………」

ディアッカの瞳を見つめていたミリアリアは、その視線を指輪に移す。

たった一言で、足元がふらつきそうになっている。

そうだろうと見当をつけていても、真っ正直に、面と向かって言われたら――その衝撃は、想像以上の大きさだった。


「ケッコン、ね」


そのために贈られた指輪。
コレをつけることは、すなわち、ディアッカの申し出を受けることを意味する。

「はい」

それを踏まえた上で、ミリアリアは指輪をディアッカに押し付けた。
無理矢理、彼の手に指輪を乗せる。

「……いや、か?」

返される指輪。
受け取れない、という拒絶。
そう、ディアッカは思ったが――

「……ほら」

なぜかミリアリアは、顔を赤くして左手を差し出している。
訳が分からず、ぽかんとしていると、彼女はつぶやいた。


「つけてくれないの?」


良く見れば、彼に向けられている指は――薬指。


「ミリアリアって、お姫様気質?」
「……あんた、今、私の機嫌損ねて良いの?」
「冗談じょーだん」


はにかみながら、ディアッカはミリアリアの薬指に、銀に輝く指輪をはめた。





-end-

結びに一言
時々無性に書きたくなるディアミリ新婚ラブラブ系……書いてないけど(←なら書け)

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