口を尖らせながら、ミリアリアは俯いた。目元と口角を上げるディアッカは、間違いなく催促を要求している。
言わせたいのだ。ミリアリアに、誕生日プレゼントが欲しいと。
その証拠に、彼はまだ「おめでとう」すら言っていない。

「何が『忘れてない?』なんだ?」
「別に、忘れたままで、良い」
「ふーん。へー。そう。忘れ去ってて良いんだ〜」
「…………」

何か気に食わない。
今日は自分が優位な立場のはずなのに、どうしてディアッカが主導権を持とうとするのだろう。
だんだん、腹が立ってくる。

「せいぜい忘れてたら? もう、貰ってあげないんだから」
「お前どんだけ意地っ張りなんだよ。欲しいなら欲しいって、さっさと言えって」
「だから、欲しくな――」

言い終わる前に、後頭部が掴まれた。
歯向かえない力で引き寄せられ、あっという間に、唇が唇で塞がれる。


それは、ほんの数秒間の出来事。


「……俺は、渡したいんだけど、ミリアリアは?」
「…………欲しい」

耳元で囁かれ、とうとう彼女は降参した。
忘れていてほしいわけがない。
おめでとう、と言って欲しくないわけが無い。


欲しくて欲しくて仕方ない、ディアッカからの贈り物。


「誕生日おめでと、ミリアリア」
「……ありがと」

もう一度、今度はディアッカから顔を近づける。
それに気付くと、彼女は静かに目を閉じた。
二人が優しく触れ合う中、ミリアリアのポケットに、小さな重みが与えられた――





-end-

結びに一言
ミリィさんおめでとう小説。さすがに「アスラン平手打ち券」はかわいそうだったかなー……と思いつつ、
大丈夫、アスランは頑丈だ、と言い聞かせながら書いてみる(笑)
ディアさんのプレゼントは、掌サイズ――てか、ポケットに入るサイズで各自ご想像を。

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