翌日、アスランは決戦の地へやって来た。 ――もとい、決戦の地がアスランの元へやって来た。ミリアリアが、取材と称して官邸に出向いたのである。彼女はカガリからプレゼントを貰うと、踵を返し、アスランの方へ足を伸ばした。 「……別の場所じゃ、駄目か?」 「どうして?」 不思議そうに、ミリアリアは首を傾げる。 するとアスランは目を泳がせ、 「いや……その、あまり、カガリに見られたくない……」 「なんだお前、やましい物でも――」 「やましくは無い。ただ、その……心情的に……」 「――あ――……」 ぽりぽりと頬をかくアスランの姿で、カガリは悟った。 きっと彼は、自分の前でミリアリアに――自分とは別の「女」にプレゼントを渡すことに、抵抗を感じているのだと。 それが例え、カガリ本人から「渡せ」と言われた「誕生日プレゼント」だとしても。 律儀なアスランの想いが、なんだか嬉しい。 「じゃ、私が席を外す。終わったら呼んでくれよ?」 そう言い残し、カガリは部屋を去った。 残された二人に、痛いほどの沈黙が訪れる。 動いたのは――アスラン。 「……期待はしない、と言ったんだ。その言葉に、責任持ってくれよ?」 言いながら、彼は内ポケットから「プレゼント」を彼女に渡した。 それは、小さな封筒だった。中には五枚の「チケット」が入っている。 手作りのチケット。 ミリアリアは、目を丸くした。 「…………えーと? これは?」 「だから、それがプレゼントだ」 「……本気?」 「だから、期待するなと言っただろう!!」 半ばヤケになっているのか、それともただの照れ隠しか、アスランは大きな声を張り上げる。だがおかげで、彼が「本気」であると、ミリアリアに伝わった。 もう一度、チケットに目を落とす。 そこに書かれていることを、表面から裏面から、一言一句読み逃さないよう、ゆっくり読んでいく。 「……確かに、カガリがいる前でこれは、プライドずたぼろよね…………にしても、良くこんなもの、思いついたわね」 ミリアリアが感心する。 彼の頭で「これ」を贈り物にする、という発想が出たことが驚きでならない。 すると、彼は言った。 「……浮かばなかったから、訊いたんだ。君の欲しそうなもの」 「誰? これだと……ディアッカ?」 「ディアッカも……キラにもイザークにも訊いてみた。君に何を渡したら良いか……そしたら三人とも、それが良いと言っていた」 「みんな分かってるわね〜」 くすっと笑うと、ミリアリアはチケットを一枚、アスランに差し出した。 「?」 「遠慮なく、一枚目使わせてもらおうと思って」 「……今、か?」 「そ。今」 にこにこ笑顔のミリアリア。 アスランは、げんなりしながらチケットを受け取る。 ――良かった。カガリを外に出しておいて、本当に良かった―― 心の底からホッとするアスランの頬を、直後、ミリアリアの右掌が強襲した。 |