風が凪ぐ。
哀しい調べを紡ぎだす。

「お前にが一番大事にしている奴のこと、ないがしろにもしたくねーしな」

その間、ディアッカがミリアリアを見ることはなかった。
どんな顔をするのか見たい……など言いながら、彼女に目が向けられることもなく。
まるで震えを抑えるように、身体をかたくして。


……なんとなく、分かってしまった。
なぜ昨日、墓参りの話を振られた時、あんなに苛々してしまったのか。


あれは――何となく、気付いていたから。
ディアッカが……彼女が、トールを一番に考えていると……それが当たり前だと、思っていることを。


そうじゃないのに。


誤解されているのが、悔しくて。

違うよ、と言えば済むことかもしれない。
トールは忘れられない人。
比べることの出来ない人。
でもそれ以上に、私は今、貴方を一番に思っているよ、と――……言えば良いのに。

言えない。
きっと、言っても彼は信じない。変な慰めと取られるのも嫌だ。
何より、口に出す勇気も無いし……例えあったとしても、トールの墓前でそれを言うのは、やはり抵抗がある。


風が凪ぐ。
澄みゆく風は、たくさんの花びらを舞わせる。


「そろそろ、帰るか」
「……うん」

ディアッカの言葉に否定も肯定もしないまま、二人は帰路に着いた。
無言の帰り道に、一層強い風が巻き起こる。


風が凪ぐ。
それはまるで、勇気の出せないミリアリアの心情を表すように……





-end-

結びに一言
みんな勇気が無いから後手ごてに回る……とゆー話。思い込んだ答えを真実として受け入れようとするディアさんと、傷つきながらも否定できないミリィさん。
……まとまり無さすぎ。言わないと、どんな話か分からなさすぎ(大反省)

*前次#
戻る0