「昨日はあんなに嫌がってたのに……どういう風の吹き回しだ?」 「別に……トールに会いたくなったし、あんたにだって、お墓参りする権利くらいありそうだし……」 「なんだよ、権利くらいって」 苦笑しながら言うディアッカの雰囲気は、神妙なままだった。 翌日のこと。ミリアリアはディアッカを誘い、トールの墓標へとやってきた。 「……こっちなんだ」 「こっちって……ここがトールのお墓なんだけど」 「もう一ヶ所あるだろ」 ディアッカが呻く。 そう、ここは彼の眠る場所ではない。オーブ郊外に建てられた、彼の「死」を宣言する場所である。 「あっちは……お墓なんて無いわ」 「でも、あいつが居るのはあっちだろ」 言われ、つきんと胸が痛む。 ディアッカが行きたがっているのが、彼の命を絶たれた「島」の方だと言うのは分かっていた。 あそこには、キラやサイとともに作った小さな墓石があることを、ディアッカは知っている。彼女とて、墓参りといえば行くのは向こうだ。でも…… でも、足は向こうに向いてくれない。 ディアッカは、納得いかないものを感じながら、墓前に手を合わせる。続いて彼女も目を閉じた。 風が流れる。 春の、穏やかな風。 そんな中、ミリアリアは昨日から気になっていたことを切り出した。 「……ねえ。何でいきなり、お墓参りなんて言いだしたの?」 頭が冷静になればなるほど、不思議に感じることだった。 今まで、一度もそんなこと言い出さなかったのに……節目でも何でもない、本当に何もない、ごく普通の日に、突然。 するとディアッカは、墓石に目を細めながら、ぽつりと呟いた。 「知りたくて」 「何を?」 「お前が、こいつの前だと……どんな顔をするのか」 |