ジュール隊に属するディアッカが協力体勢下に入ったとはいえ、こちらに来ないのは当たり前のこと。なのにそれは出来ないと言われ、ショックを受ける自分がいる。

《それより二世……ちょっとくっつきすぎじゃねえ?》
「くっつき……そんな、固いこと言うなよ。触ってるわけでもないんだし」
《だめ。その距離は危険。てゆーか殺意が芽生える》
「これくらいで殺意芽生えてたら、お前、キラやノイマンどーすんだよ!」
《あいつら、二世よりっくっついてんのか?!》
「〜〜って、何の話してるのよ!!」

思わず席から立ち上がるミリアリア。
変な方向に行きかけた男二人の会話は、彼女の一喝で治まった。
……が。

「ディアッカ。私が誰とくっつこうが、あんたには関係ないと思うんだけど」
《ある》
「どんな関係よ」
《俺、独占欲強いから》

詳しい説明も、長々しい戯言も必要ない。たった一言の短い一文で、辺りは静まり返った。
話し合いを行なっていたマリューやイザークすら、耳を傾けている。

「独占……されるいわれはない……わ」
《こっちは独占したいの》

ディアッカは続ける。

《言っとくけど俺、あきらめてねーからな》
「何言ってるのよ!!」
《あきらめてないって言っただけだぜ? お前のこと》
「〜〜〜〜!!」

恥ずかしくて、どうにかなってしまいそうだった。
軍の通信回線を使って、しかもインカム越しではなく、スピーカーを伝って届く声で。

彼女は今、愛の告白を受けている。

《あー……何回目かなー、告るの。アークエンジェルで四回やってるから……》
「違う違う。お前、俺が知ってるだけでも六回は玉砕してるぞ」

指折り数えるディアッカに向けて、チャンドラから訂正が入れられる。

《げ。そんなにフラれてたっけ。なら……》
「も、もう良いじゃない! そんな昔の話っ!!」
《昔? たった二年だぜ?》

二年。たった二年で変わってしまった、二人の居場所。

《ま、そんなこたー、どうでも良いんだ。大切なのは現在であって……》

ディアッカは瞳を、ミリアリアと合わせる。
彼女もまた……瞳を離すことはしなかった。

久々に見る瞳だ。
ミリアリアは、この瞳が好きだった。


今も……好きだ。


《今ミリアリアは、俺のこと好き?》
「……そんなこと今この場で言われて、嘘でも好きって言うと思ってる?」
《や、全然》

これまたディアッカは、あっさりと手を振った。
楽観的なのが悪いとは言わない。だが楽観すぎる姿勢が、ミリアリアに苛立ちを与えてくれる。

《でも……ほら、自分の気持ちは、常に伝えておきたいじゃん?》
「ばか」

ディアッカが一言で告白を始めたように、ミリアリアもまた、一言で切り捨てる。

《うーん。てことは、今回もダメ?》
「戦場のど真ん中で告白なんて、非常識すぎる。ムードも何もあったもんじゃないわ」

もっともな事を言うミリアリア。
腕を組んで、ふんぞり返って……

「だから」

いつもなら終わる場面で、彼女は続けた。


「終わったら言いに来なさい」


まるで命令のように。
いや――命令だ。言いに来い、と言ってるのだから。

《了解。戦闘終わらせたら、馳せ参じます》

ピッと敬礼するディアッカの顔には、満面の笑みが広がっていた――




-end-
結びに一言
[さくらなみき]初♪ の最終話の動向によっては、ありえない話になる時事ネタにチャレンジ☆
ジュール隊長は、ミリィさんの顔を知っている設定でお届け中。

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