それから十数分後、ディアッカはAAに戻ってきた。
バスターは無傷。
でも――ディアッカはそうじゃなかった。

全身ホコリだらけで、右足を庇いながら歩いてる。
一緒に戻ってきたキラが、すぐさま肩を貸しに走った。

……怪我してるの?

私もディアッカに駆け寄りたかったけど、足は上手く動いてくれない。
そうこうしている内に、ディアッカが私の前まで来て、歩みを止める。

「……なんて顔してんだよ」

声と共に溢れる笑み。
私は……笑えなかった。

「遅い」
「悪ぃ」
「連絡くらいしなさいよ」
「だな」
「他人事みたいに言わないで」
「……ごめん」

ディアッカが私に触れる。
ほほに伸びる指が、目元を拭った。

「俺のために泣いてくれたとか?」
「思い上がらないで」

心とは反対の言葉がノドを伝う。
なぜディアッカを前にすると、本心が言えなくなるのか。
そんな私の反応に、彼は軽く笑い、ポケットから青く輝くものを取り出した。
それは――青い宝石のついた指輪。


私の瞳と同じ色。


「やるよ」
「え?」

言った意味を理解する前に、指輪を手に握らされる。

「ちょっとした戦利品」
「な……いらないわよ」
「そう言わずにもらってくれよ。お姫様に渡すと、良いことあるらしいから」
「は?」

全くもって意味が分からない。
そもそも……姫? こんな軍人になって数ヶ月の一般兵をつかまえて姫って……なに?

「ちょっと、分かるように言ってよ。良いこと? 姫って――」
「俺にとってのお姫様、って意味」
「――――」

血が上る。
顔がどんどん赤くなって……動けなくなって。

「んじゃな」

肩をポンッと叩くと、ディアッカはキラに連れられ、医務室へと歩き出した。
私は――まだ動けない。

俺にとっての姫って……どういうこと?
……えーと、えーと……
……だめだ。体中が熱い。


ふと、手の中の指輪を見た。
青く輝くアクアマリンの指輪。
ディアッカが私に、指輪をくれた……
にやけそうになりながら、あまり深く考えないで、それを左手の薬指にはめてみる。

そして驚く。

「……うそ」

思わず声が出た。
嫌味なくらいぴったりなんですけどー。

って、何やってんだろ、私。こんな指にはめて……
……ん?
おかしいなあ……はめる時はスッと入ったのに、抜こうとしたら第二関節に引っかかるぞ?
え? あれ?
もしかしてこれ……


「……抜けない……?」





-end-

結びの一言
指輪は、石鹸を使うと外しやすいらしい。

お題配布元→ディアミリストに30のお題

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