「ごめん……変なこと言って」
「あ?」

いきなり神妙になられ、ディアッカは面を食らってしまう。正しい反応ができたのは一瞬後のことだった。

「や、気にしてないから」
「そお?」
「……ああ」

返事が遅れる。

困ったような表情で、なおかつ上目遣い。

……好きな女の子にそんな顔させてしまった、という罪悪感と、ツボをつく可愛い仕草にドキドキした??二つの感情が、ディアッカの中で入り乱れた結果だ。

なにより、ここまで素直になられたのは初めてのような気がする。

「……気にしてんじゃない」
「してないって」
「今、言葉に詰まった」
「気のせい」

今度はヘマしない――と言わんばかりに即答し続けるディアッカ。
これほど強気で出られては、返す言葉もなく。

「…………」

不思議な沈黙が、辺りを支配した。
居心地が悪い。
どうにかしてこの沈黙を打破しなければ……そう思ったミリアリアは、とても不本意そうな顔で、

「……あの、さ」

――やり場のない手をもじもじさせながら、声を発した。

決して、言い返す、というカテゴリのものではないが――これしか言葉が浮かばなかった。


「結構、似合うのね、ソレ」


ちらりと見上げ、その目をディアッカの眼鏡に向ける。
ディアッカからすれば、不意打ち攻撃以外の何者でもない。

気付くと顔は、満面の笑みであふれていた。

「ありがと」

その笑顔にミリアリアは再度顔を赤くする羽目になる。
考えたこともなかったが、実際に見るとすごく似合っている。

――ディアッカの眼鏡姿。

しかも見惚れてしまった――など、絶対言えない。
これだけは絶対に口に出すまい、と心に誓うミリアリアだった。




一方、完全に存在を忘れ去られたサイは――内心複雑になりながら――二人の姿を眺めていた。


〈……意外にお似合いなんだよな……この二人〉


柔らかな笑みをたたえて。

それはもう、微笑ましすぎる二人のやり取りを。




-end-

結びの一言
眼鏡かけたディアッカさんを書きたかっただけです。

お題配布元→ディアミリストに30のお題

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