というわけで食堂にやってきた二人はいつも通り向かい合って座り、いつも通りの食事風景を作り上げていた。

そう、いつも通り。
ディアッカはAAのクルーになってまだ一ヵ月もたっていない。
なのにこの光景は『いつも通り』と称せるほどのものなのだから不思議だ。

「……ちゃんと休んでるか?」
「え?」

突然の問いかけに、ミリアリアの声は上ずる。
食事も程々に終わり、あとはデザートを食べて終わり――というときに降って湧いた言葉だ。

茶化してるとか、そんな感じではない。ディアッカの表情はとても真剣だ。

「顔が疲れてる」
「何ソレ」

言い捨て、ミリアリアはデザートを攻略にかかる。
だがディアッカも引かなかった。

「さっきもなんか考えてる風だったし」
「…………」
「サイや……他の奴らの様子もおかしい」
「…………」
「こないだの連合艦……あれの艦長、ラミアス艦長の知り合いなんだろ?」
「…………」
「それに、キラが助けようとした――」
「やめて」

ディアッカの言葉を黙って聞いていたミリアリアだったが、たまらず声を上げた。
苦しそうな、痛々しい悲鳴のよう。

「フレイのことは……その……」

聞かないで欲しかった。
聞かれたら、いらないことまで言ってしまいそうで。

しかし、

「フレイ?」

言ってもディアッカは分からない。
銃を向けられた手前、顔くらいは覚えているかもしれないが、名乗りあうような状況でもなかった上、フレイがAAを降りたのはあの直後だ。
おかげで彼女の思惑とは裏腹に、ディアッカの詮索を受けることとなる。

「フレイって……あのポットに乗ってた女?」

頬杖をつき、聞いてくるディアッカの顔に悪意は無い。
ただミリアリアの心情が分かっていないだけだ。

「俺、あの声聞き覚えあんだけど……これに乗ってた?」
「……乗ってた」

静かに声を絞り出す。

「なんでヴェサリウス乗ってたのかねー」
「……こっちが聞きたいわよ」

ディアッカはぎょっとした。
素直に出てきた疑問に怒気を込めて返され、どう受けていいのか分からなくなる。

一方でミリアリアは、わきあがる感情を抑えることが出来なくなっていた。

「どうしてフレイが、ザフトの捕虜になってたの?」

ディアッカに聞いたって、分かるわけも無いことだ。

だが――止まらない。

「フレイは連合にいたのよ? アラスカで、戦場とは
無縁の部署に配属されたのに……どうして捕虜になってるの?」

最後の方は、声がかすれて思うようにしゃべれなかった。

涙があふれて。

ディアッカは、空になった食器一式を片付けると、ミリアリアの肩に手を伸ばす。

「……まだ大分泣きそ?」
「……………………」

何も言わないミリアリア。それが答えだった。

「じゃ、場所変えるか」

人がいる前じゃ泣きづらいだろ? と耳元でささやかれ、ここが食堂だったことを思い出した。
恥ずかしさのあまり、身体が震えてしまう。
ディアッカに支えられながら、ミリアリアは食堂を出た。

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