考えも考えても答えにたどり着けず、大きなため息をつく――彼がブリッジに来たのは、そんなタイミングだった。


「おーい艦長さん」

空気の音と共に、オーブの象徴、赤いジャケットを着たディアッカが姿を現す。
彼はミリアリアに一瞬だけ目を向けると、そのままマリューのもとへ向かった。

「これ、頼まれてたやつ」

言いながらディアッカは、白いディスクをマリューに渡す。
しかしマリューは受け取りながらも、目を白黒させていた。
ほんの数秒の沈黙の後、

「……私、なにか頼んだかしら?」

根本的な質問が飛ぶ。

「ストライクのデータ。マードックのおっさん、俺のが早いから、って押し付けてくれた」
「あら……ごめんなさい、手間かけさせちゃったわね。……ありがとう」
「いえいえ」

何でディアッカは艦長相手に皮肉を言ってるんだろう……そんなことを考えながらモニタを見ていると、突然画面が暗くなった。

「まだ仕事中?」

いつの間にか、ディアッカが後ろからモニタを覗きこんでいる。
この距離は……近い。

「見て分かんない?」
「そろそろ昼休憩の時間かなー、と」
「お昼、ね」

言われてみれば、今にもお腹の虫は鳴り出しそうだ。時間もちょうどいい。

「ミリィ、行ってきたら?」

悩むミリアリアに、後ろからサイの声が届く。

「せっかく誘われてるんだし」


〈誘われてる?!〉


驚いてディアッカを見ると、にやっ、と笑われた。

これは、おとなしくついて行ってもいいんだろうか……
そんなことも考えたが、断ってもついて来そうな雰囲気だったので、憮然としながら言ってやった。

「……仕方ないから、一緒に食べてあげる」
「それはそれは光栄なことで」

ぎょうぎょうしく言い、ディアッカはミリアリアに右手を差し出す。

「……!」

意味が分かった瞬間、ミリアリアは顔を赤くして立ち上がった。

――1人で。

「ちぇ」

一方、手を繋ぐタイミングを失ったディアッカは、口惜し気にミリアリアの後をついていった。

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