「……わたし、昨日あんたと会った覚え、ないんだけど」
「それが会ってるんだよねー。ミリアリアが酔っぱらって、手ェ付けらんなくなってる時に」

これは、信じるべき話なのか、信じてはいけない話なのか。
どちらかと言えば、信じたくない。

そんな私の心情を知ってか、奴は言い続ける。

「かわいかったよなあ、酔ったミリアリア。うっとりした目ェしてさ」
「う、うっとり……?」
「そ。俺にもたれかかって、ディアッカ大好き〜、とか」
「そんなこと――」
「言うわけないけどさ」


……遊ばれてる……
いま私、完璧に遊ばれてる……

悔しさが身を焦がす。


「冗談はさておいて――たまには良いんでない? そーゆーのも」

どういう意味だ、それは。たまには苦しめ……そう言いたいの?
文句あり気に見上げると、奴は口元を上げ、

「嫌なこと考える余裕なんて、全くないだろ?」
「――――!!」

一気に目が覚めた。
確かにお酒を飲んでから、今の今まで――ディアッカに言われるまで、悩みを抱えていることすら忘れていた。
いつもは、考えたくなくても、勝手に思い浮かんでしまうのに。

……どうしてディアッカは、私が悩んでるって、知ってるの?

「抱え込むのは悪い癖だぞ? たまには頼れよ……俺とか、さ」

そう言ったディアッカは、極上の笑みをたたえていた。
企んでいる顔ではない。私を想ってくれる、優しい微笑。

「お。そろそろ行かねーと、おっさんがうるせーな……じゃ、また後でな!」

実は急いでいたのか、ディアッカは――方角的に見て格納庫へと走り出した。

残された私は、考える。

あいつはいつも私をからかって遊ぶけど、肝心なときは優しい。


どうして彼は、心を和ませてくれるんだろう。
どうして私は――ディアッカの些細な言動で、安らぎを覚えるのだろう。


ディアッカ・エルスマン。とてもとても、不思議なひと。

話せば話すほど。
触れ合えば触れ合うほど。

――もっと彼を知りたくなる――





-end-

結びの一言
ミリィさんに、ディアさんを意識しなおしてもらおうと……(反省箇所多数)

お題配布元→ディアミリストに30のお題


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