「ありがとね、ディアッカ」

ミリアリアからそんな言葉が届いたのは、翌日の昼過ぎだった。
何の話だ――?
考えるディアッカを見て、彼女は申し訳なさそうに告げた。

「ずっと私の看病してくれてたって聞いて……」
「あ? ああ……」

結局ディアッカは、夜遅くまでミリアリアに付き添っていたのである。最終的に、容態が落ち着いたところで退散したのだが……

「でも、俺のせいで熱上がったりもしたから……」
「あんたのせい?」

おかしな物言いに、ミリアリアは小首をかしげる。
……何だろう、この反応は。
これってまさか――最悪のパターン?
心で呻いた後、ディアッカは確かめた。

「昨日のこと、覚えてるか?」
「昨日? んー……」

考えている。彼女は昨日何があったのか、必死に思い出そうとしている。
……その姿だけで充分だと、ディアッカは思った。

「いや、大したことじゃないから。覚えてないならいいわ」
「そぉ?」
「ああ」

言いながらも、彼は肩を落として去って行く。
その後ろ姿が見えなくなってから、ミリアリアはポツリとつぶやいた。

「……ばっかじゃないの?」

腕を組んで、にらみつけるように。

「忘れるわけないじゃない」

不敵な笑みは、決意の証。
いつか、ディアッカが勝手に引いている境界線を越えるための――



-end-

結びの一言
忘れたフリをするのは、ミリィさんなりの心遣いなのか、ただの意地悪なのか…はたまた天邪鬼系ミリィさん降臨なのか(謎)

お題配布元→ディアミリストに30のお題

*前次#
戻る0

- 29 /66-