安どの表情が広がる。
それはキラだけじゃなく……俺の顔にも表れてただろう。

何とか引き上げられ、ようやく芯から「助かった」と実感した俺は、改めて思った。




間抜けすぎ。


捜索隊の到着で、なんとかAAに帰還することは出来たけど、あいつに合わせる顔が全く無いことに気がつく。
そりゃ、会いたいって願ったけどさ。無理。今ほんと、無理。顔見たら、きっと落ち込む。
暫くはミリアリアの目の届かないところに居よう……そう思った矢先のことだった。


居たよ。格納庫に。すっげーふくれっ面で、お出迎えに来てくれてる。
どんな顔しろってんだ……
キラに支えられながら、医務室へ向かう俺。
すなわち入り口。
その進行方向にミリアリアが居る。

……頼むから避けてくれ。
心の中で呻きながらふと彼女を見て……驚いた。

瞳が赤い。
おかげで俺の足は、彼女の前で止まってしまった。

「……なんて顔してんだよ」

笑みが溢れたのは自分でも不思議だった。なんて言うか……笑うことしか出来なかった……というか。
だが、彼女は笑わない。

「遅い」
「悪ぃ」
「連絡くらいしなさいよ」
「だな」
「他人事みたいに言わないで」
「……ごめん」

言って俺は、彼女に触れる。
腫れ上がり、赤くなった瞳。
すごく……痛々しい。

「俺のために泣いてくれたとか?」
「思い上がらないで」

喜びのあまり思わず出た言葉だったのだが、彼女はそっけない態度で返してくる。
でも俺は嬉しかった。
ミリアリアはいつもと変わらぬ表情を向けてくれる。
違うのは瞳の色だけ。

ふと、あの絵本を思い出した。タイトルまでは覚えてないが。
――笑顔を失ったお姫様が、指輪の力で笑顔を取り戻す――


この指輪にそんな力があるとは思っちゃいない。だが……気づくと俺は、指輪を取り出していた。

「やるよ」
「え?」

呆ける彼女に、無理やり指輪を握らせる。

「ちょっとした戦利品」
「な……いらないわよ」

むくれ、ミリアリアは指輪をつき返そうとする。その前に、俺は先手を打った。

「そう言わずにもらってくれよ。お姫様に渡すと、良いことあるらしいから」
「は?」

彼女は面白いくらい意味が分かっていない。
分からないものだから、彼女は真意を問おうとしつこく迫る。

「ちょっと、分かるように言ってよ。良いこと? 姫って――」
「俺にとってのお姫様、って意味」


瞬間、自分でも驚くべき言葉が飛び出した。
何言ってんだ、俺。
言われたミリアリアも、思いっきり固まってしまっている。

「んじゃな」

極力平静を保ちつつ、彼女の肩をポンッと叩いて……俺はキラと再び歩き出した。
最初は黙っていたキラ。それは俺を心配して神妙になっている……わけではなく、ただ単に、笑いを堪えられなくなっているだけ。
小刻みに体が震えている。

「笑いたきゃ笑えよ」
「ごめん……」

謝るわりに、目元には涙すら見える。
……そんなにウケたのかよ。

「勇気あるなーと思って」
「自分でびっくりだ」

本当にびっくりだ。まさか自分で、あんな行動に出るとは思わなかった。
ただ……あの指輪のおかげで色々分かったのも事実で。

もしかしたら、あいつに持っていてほしかったのかもしれない。
俺の本音に気づかせてくれた指輪を。



ミリアリアへの気持ちを教えてくれた指輪を――




-end-

結びの一言
なんだかすごく、まとまりが無いような(汗)
絵本があったのは……この施設には子供もいたって事で(滝汗)
……指輪は??

お題配布元→ディアミリストに30のお題

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