……なんだこりゃ。
それが、読み終わった時の第一感想だった。

なんつーか……本当にただの絵本だった……
てっきり何か、研究資料とか紛れ込んでるのかと思ったけど……マジ絵本かよ。
しかも全く面白味が無ぇ。
大体、こんな指輪一つで何が変わるんだか。

半ばふてくされながら、青い指輪を見る。


……不思議な感じだ。


吸い込まれるような、青。
何でこんなに、この指輪が気になるんだ?
俺の指には絶対はまんねー様な、小さな指輪なのに。

なにか理由があるはずだ、と記憶を掘り起こす。
その最中に浮かんできたのは……ピンクの軍服がよく似合う女の子だった。


突然納得する。
この宝石は、彼女の瞳と同じ色なんだと。
だからこんなに気になるのか……

「まっじー……」

指輪を握りしめ、その場にしゃがみ込む。

こんな極限状態でも、俺は彼女の事を考えてしまうのか。

確かに気になっていた。出会いが出会いだったし、放っとけないような危うさを持っている、どうも目が離せない女の子。
……それだけだと思っていたのに。



――まさか、彼女がこんなにも、心の奥底に住み着いていたなんて――



会いたい。
早くミリアリアの側に戻りたい。
だが、ここでボーっとしてたって、状況が好転するわけでもないんだよなー……

……少しばかり、悪あがきでもしてみますか。
立ち上がり、俺は開かない扉に目をやった。

入り口は七桁の暗証番号制。こんなの一つ一つ試してたらいつまでかかるか分からねぇ。
一番の近道は――上なんだよな。俺が落ちたあの穴から這い上がれれば、入り口にとめたバスターまでそう遠くはない。
天井までの高さ、約三メートル。普段なら大して苦でもない距離だが、この足だと……届くかどうか。
……と、周りを見渡してみたら、ちょうど良い具合に机を発見。ついてるなー、俺って。日頃の行いが良いんだろうか。
見つけた机で台を作り、高さを稼ぐ。後は、自分の跳躍力に賭けるしかない。

右足の痛みは引く気配をみせない。それは成功する確率の低さを如実に表している。
机によじ登ったところで、手の中の指輪に目を落とした。
まるで彼女から……ミリアリアから、力を分けてもらうように。

……本当に、分けてもらえたのかもしれない。
このアクアマリンを見ていると、不思議と勇気が湧いてくる。

うっし。準備は全て整った。
それじゃあいっちょ――出たとこ勝負といきますか!


響く足の痛みを堪え、俺は机を踏み切った。


「っの――!」

あらん限り手を伸ばす。おかげで何とか端っこに手をかけることは出来た。後は懸垂の要領で……ん?
何か……不吉な音がするぞ?
手元がミシミシいってるのは気のせいか?

……気のせいじゃねえ。
早く上がらねえと落ちる! ――そう思った時だ。


「ディアッカ?!」


よく知った声と共に、少年が――キラが、俺の手を掴んだ。

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