「ここか」 「うん」 問題の部屋を前に、二人はゴクリと息を飲んだ。 強く見つめられる一枚の扉。その横にはモップやらホウキやら……まあ、掃除用具一式が準備万全の様子を見せている。 「サイはいねーの?」 「他に仕事があって……」 「ふぅん」 話しながらも、目は扉から離そうとしない。 他の部屋と何ら変わり無い扉なのに、なぜかとても嫌な気配を感じる。 しかし、そんな気配に足をすくわれていられる訳もなく。 「いくぜ!」 ロックを解除したディアッカは、動こうと頑張る自動ドア君に力を貸すべく、ほんのり開いた隙間に指を入れ―― 「――でぇいっ!」 力まかせに開けた。 本当に文字通り、力まかせで。 「ふー…………」 第一段階をクリアし、次のステップに進むべき二人の足は……動くことを拒絶した。 目の前に広がる光景が、二人の頭に警戒音を鳴らす。 「……なあ」 「……何よ」 「…………この中に入んのか?」 「……………………できれば入りたくナイ」 ミリアリアからも本音が出る。 その部屋は、一言で表すなら「樹海」だった。 たくさんの埃と散乱する家具――らしき物達。 足元に倒れるタンスなど、一目でそれと分からないくらい、大変な事態に陥っている。 「何で半年で、こんな部屋出来んだよ……」 「私に聞かないで」 二人の顔は、完全に引きつっていた。 足元を蜘蛛が一匹歩いていたが、それすらも可愛い住人かもしれないと思えてしまう。 いや、それ以前に、戦艦に蜘蛛がいるってどうなのだろう…… 「……お前、ここで待ってるか?」 「え?」 突然の申し出に、ミリアリアは驚いた。 それは、この中にたった一人で乗り込む、ということで。 「でも……」 「中すごいし、本当に、何潜んでるか分かんねーぞ、これ」 「……ディアッカ……」 不思議と、ディアッカが男らしく感じる。 実際、本人そういうところを見せようと頑張っているので、何も感じてもらえなければ、至極虚しい。 「そう……だけど……」 ミリアリアを心配するディアッカ。 だからこそミリアリアは、引くことが出来なかった。 「私も行く。私が言い出したことだもん」 「……おっけー。でも、無理はするな。厳しくなったらすぐ出ろよ?」 「うん」 こうして開かずの間の冒険――もとい、樹海の部屋の大掃除が始まった。 |