頭をニ、三度振り、サンタは頭に浮かぶ少女の姿を消し去ろうとします。



〈俺は『サンタ』なんだから〉



サンタは「幸せを届ける者」なのだから。
そう言いきかせても、ほら、少女の笑顔が浮かんできます。

金色の髪が。
自分を呼ぶ声が。
サンタレッドを「アスラン」に戻そうとします。



〈会えないのは、分かっていたことじゃないか〉



サンタはクリスマスにお仕事をします。これはとても重要で、とても忙しいお仕事です。サンタになれば、クリスマスに自由な時間を手にすることは出来ません。
分かって、アスランはサンタになる道を選びました。


拳を握り、唇を噛み、アスランは――……サンタレッドは地を蹴ります。
心の底に、少しだけ悔しさ。
傍にいけない歯がゆさ。

会いにいけない悲しさ。



〈カガリ――……〉



サンタは、心の中で呼びました。
愛しい人の名を呼びました。



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