「んだよ、こんな時に……」

ぶつぶつ文句を言いながら携帯を取り出したディアッカでしたが、着信の相手を知った瞬間、態度が豹変しました。
上着を脱ぎながら、通話ボタンを押します。


「もしもし? どーした?」
《あ、ごめん。まだ仕事中だった?》
「――いや、今終わったとこ」


嘘はついていません。打ち上げは残っていますが、これは強制参加ではないし、元より彼は、欠席するつもりでした。
しかし背後の賑わいが、ミリアリアにそれを感じさせました。


《なんか……後にした方が良さそうね》
「んなことねーって! 変な気ィ使うなよ。今から俺、そっち行く気だし――」
《え?! 今から?!》
「そ。今から」

クリスマスを、ディアッカはミリアリアと一緒に過ごせませんでした。だからこそ一刻も早く、恋人の元へ行こう――そう思っているのに、彼女の態度はつれません。


《やだ、良いよ、来なくて!》
「やだって、おい……」
《今来られると困るの! 絶対来ないで!!》


電話の向こうで、ミリアリアが叫びます。
その後ろから、ちーん、と言う音も聞こえました。
ディアッカの脳内にある知識を総動員するかぎり、電子レンジの音にしか聞こえませんでした。


《……ねえ。今、何か聞こえた?》
「いや? お前のヒステリックな叫び声しか聞こえなかったけど?」
《ヒステリックって――何よ、それ!!》


ディアッカは何も聞こえなかったことにしました。
彼の恋人は、時々すごく可愛いことをしてくれます。それは決まって、自分を喜ばせようとする時に行なってくれます。
だから、何も気付かなかったことにしました。


「今が駄目なら、いつ俺は会いに行けるんだ?」
《う……お、お昼くらい……》


少し頼りない声が、電話を通じて届けられます。
彼女は一体、何をしようとしてるんだろう――考えるだけで、心身が高揚していきます。


「じゃ、昼頃そっち行くから」


クリスマスが終わります。
サンタの魔法は解け、一人の人間に戻っていきます。


来年の、クリスマスまで……



−end−

結びに一言
サンタの最後は「その後のディアミリ」で締め★
ミリィさんは、ディアさんのために、一日遅れのクリスマスパーティーを企画……

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