受話器が、フレイの耳から離れました。
静寂が訪れます。

「……ねえ。これ……作り物?」
「いえ。『今』の貴方の『お父さん』の姿ですよ」


サンタは話しました。
この機械は、遠く離れた大切な人の姿を映すものだと。
強い思いが、受話器に声を、画面に姿を見せてくれるものなのだと。

フレイの『会いたい』という強い願いが、遠く離れた彼女の元に、父の姿を届けたのです。


「貴方のお父さんも、貴方と一緒にいたいって思ってるんですよ」


その瞬間、フレイから、大粒の涙が零れました。
寂しいのは自分だけじゃなかったと。
仕事で遠い宇宙の上にまで行ってしまった父もまた、自分に会いたいと思ってくれていたと。


「あ、あの、泣かないで……」


一方で、サンタは慌てました。
泣かせるために、父の姿を見せたのではありません。これでは逆効果です。


「僕は、その……」
「ごめん。分かってる。……ごめんなさい」


サンタを困らせまいと、フレイは必死に涙を拭います。

父の姿が見れたこと。
声が聴けたこと。
その思いを知れたこと。

それら全てを伝えてくれた少年のサンタ。

彼の優しさが、とてもとても嬉しくて。


「……ありがとう。サンタさん」


嬉しくて涙を溢れさせながら、微笑むフレイ。
微笑みにつられ、サンタもまた微笑みました。




それは、祝いの夜に起きたお話。
一人の少女が、涙を微笑みに変えたお話……




−end−

結びに一言
初めて書いたニコル×フレイ……
あまりCPって感じはしないけど、こんなのもたまにはアリかな? みたいな気持ちで。

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