「……あーあ。何やってんだか……」

ハイネは後悔していました。ミーアへの言動に、ひどく後悔しています。
さすがに言いすぎた――と、肩を落としてしまいました。
すると、声が響きました。

「何? 八つ当たりして落ち込んでるの?」

驚き、ハッと顔を上げると、扉の前に、しかめっ面をしたミーアが立っていました。
彼女はハイネまで後数歩、という所まで近付くと、後ろに回していた手を、胸元に持って行きます。そこには、一通の手紙が添えられていました。
先ほどの、サンタグリーンの言っていた「悩みの書かれた手紙」です。
ハイネの顔が青ざめていきます。
それは、彼の書いた手紙――……

「それっ……!!」
「あんた、結構ウジウジした男だったのねー。ちょっと幻滅」

ハイネの顔に、怒りが満ちます。
触れられたくない部分に足を踏み入れられ、不快感が強まります。

彼には悩みがありました。今、彼は次期オーブ首長、カガリ・ユラ・アスハの専任執務官の任に就いています。しかしこの職、彼がその実力で登りつめた場所ではありません。
カガリには幼少より、キサカという専任の執務官がいました。しかし二ヶ月ほど前、カガリを狙った暗殺未遂事件が起こり、キサカは大怪我をしてしまったのです。
それゆえハイネは、キサカが復帰するまでの間、彼の代役として、執務官を任されたのです。


身代わりの存在。
偽者の自分。

彼はミーアに、自分を重ねていました。
自分を重ね……その場所に満足している彼女に、激しい苛立ちを覚えてしまったのです。


「悪いけどうち、悩み相談の場所じゃないのよね。こんなこと手紙に書かれても、どうしようもないんだけど」
「別に……ただの気晴らしに書いただけだ」

平然でいようと、ハイネは頑張ります。けどその姿は、強がっているようにしか見えません。
痛々しすぎて、ミーアは小さなため息をついてしまいました。


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