鉢合わせたのは、一人の女性でした。
海の色の瞳を持った女性でした。
茶色の髪を、外にハネさせた女性でした。


ミリアリアです。
サンタの前に現れたのは、まさに彼の恋人、『ミリアリア』でした。


彼女もまた、サンタの姿に動きを止めました。身体を硬直させたのが分かります。
そして、目が合って――……彼女は身を翻しました。
逃げたのです。
ちゃんと『ディアッカ』だと分かったはずなのに、なんと彼女は逃げてしまったのです。





なんで?
どーしてそこで逃げるんだ??





頭が真っ白になりました。
理性が飛んでいきます。
気付くとサンタは、走っていました。
走って――ミリアリアに追いついて――彼女の腕を捕らえていました。

「待て、ミリアリア――」
「やめて! なんで追いかけてくるのよ! 駄目じゃない、あんた、サンタなんだから!!」

衝撃の言葉が、ミリアリアから飛び出しました。

「いつ、から……」


心に冷たいものを走らせながら、サンタが尋ねます。

「いつから、知って……?」
「知ったのは、今」

驚きの言葉を、彼女は言ってのけます。
腕を捕らえられても、彼に背を向け、決してサンタの姿を見ないように、彼女は続けます。

「今、アンタのその姿見て、全部分かったから……別にもう、良い」
「良いって……意味分かんねーんだけど」
「だから! ……下手な言い訳、しなくて良いって言う意味よ」

彼女も知っています。サンタが自分の正体を第三者に教えてはならないと、ちゃんと知っています。
だから逃げました。
彼に『サンタ』を辞めさせないために、逃げたのです。


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