サンタは話の見えなさ加減に、苛立ちすら感じていました。
するとシホは、すみません、と小さく謝ってから、少しだけ距離を取り、話し始めます。

「私……ハーネンフースという、武道の家の人間なんです。ハーネンフースの人間は、自分の仕える主を見つけなければなりません。そして、一度忠誠を誓った『主』に一生を捧げる掟があるんです」

これが、ハーネンフース家の「しきたり」です。
一生をかけ、唯一の主を守る……これはシホの「宿命」と言っても過言ではありません。
シホは重々しく、話を続けました。

「半年前、父がセイラン家と勝手に契約を結んでしまったんです。私を、セイラン家の跡取り、ユウナの護衛役にする、と。それはもう、主従契約と同じです。私はこの一生を、ユウナ・ロマ・セイランに捧げなくてはなりません。だから……」


シホが、サンタを見上げます。


「一年前、空を翔る貴方を見つけました。その時、思ったんです。私は、あの人に仕えたいと。だから連絡先を探して……ずっと、手紙を送っていたんです」


その目はとても真剣でした。
嘘ではないと、はっきり分かります。
サンタの心に、小波が立ちはじめます。


「その内……一向に『主』を見つけない私に父が業を煮やして勝手に……
叶わぬ願いだと分かっています。貴方に仕えることが無理なのは、分かっています。けどせめて、一度だけ、もう一度だけお会いしたかったんです」


*前次#
戻る0
-16/73-