「あの子、ハーネンフース家の人間なのよ」 「ハーネンフース……?」 ハーネンフース家とは、オーブでも有名な武道の名家で、この家独特の「しきたり」が存在します。彼はその「しきたり」が彼女を悩ませていると直感しました。 その時、事態が動きました。 シホが手すりに体重をかけ、川を覗き込みます。何かを見つけたのか、しきりに下へと手を伸ばしています。 結果、彼女はバランスを崩し、川へと落ちそうになり―― 「危な――……」 ミーアが叫んだ時には、サンタが走っていました。その俊敏な足で彼女の元へ飛んで行くと、そのままシホを自分の方へと抱き寄せます。 そして、一喝しました。 「何をやっている! 怪我どころじゃ済ま、な……ぃ……」 最初は勢いのあったサンタの語調でしたが、どんどん途切れ途切れになっていきます。 シホの表情に驚いたのです。彼女は怒られているにもかかわらず、サンタの姿を確かめるや否や、喜びの表情を浮かべてしまいました。 「やっと、会えた……」 自分に涙まで浮かべて微笑みかけるシホが、何故だか眩しく映ります。 「で、俺に会って、何がしたかったんだ?」 感情を極力抑えながら、サンタが尋ねます。 彼女はサンタにプレゼントをお願いしていました。 その内容は――……「サンタホワイトに会いたい」 謎の多いプレゼントの中身を問われ、シホは目を伏せ、言いました。 「区切りを、つけたかったんです」 シホの言葉に、サンタはぴくりとこめかみをつり上げます。 「これで……思い残すことはありません。願いを聞いてくれて、ありがとうございました」 「……待て。これで『思い残すことは無い』とは、一体どういうことだ?」 |戻る0| -15/73- |