「あの子、ハーネンフース家の人間なのよ」
「ハーネンフース……?」

ハーネンフース家とは、オーブでも有名な武道の名家で、この家独特の「しきたり」が存在します。彼はその「しきたり」が彼女を悩ませていると直感しました。
その時、事態が動きました。
シホが手すりに体重をかけ、川を覗き込みます。何かを見つけたのか、しきりに下へと手を伸ばしています。
結果、彼女はバランスを崩し、川へと落ちそうになり――

「危な――……」

ミーアが叫んだ時には、サンタが走っていました。その俊敏な足で彼女の元へ飛んで行くと、そのままシホを自分の方へと抱き寄せます。
そして、一喝しました。


「何をやっている! 怪我どころじゃ済ま、な……ぃ……」


最初は勢いのあったサンタの語調でしたが、どんどん途切れ途切れになっていきます。
シホの表情に驚いたのです。彼女は怒られているにもかかわらず、サンタの姿を確かめるや否や、喜びの表情を浮かべてしまいました。


「やっと、会えた……」


自分に涙まで浮かべて微笑みかけるシホが、何故だか眩しく映ります。

「で、俺に会って、何がしたかったんだ?」

感情を極力抑えながら、サンタが尋ねます。
彼女はサンタにプレゼントをお願いしていました。

その内容は――……「サンタホワイトに会いたい」
謎の多いプレゼントの中身を問われ、シホは目を伏せ、言いました。


「区切りを、つけたかったんです」


シホの言葉に、サンタはぴくりとこめかみをつり上げます。

「これで……思い残すことはありません。願いを聞いてくれて、ありがとうございました」
「……待て。これで『思い残すことは無い』とは、一体どういうことだ?」


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