ミーアが言う通り、サンタには規定があります。それはサンタ自身が守らなくてはならない規則だったり、サンタの安全や身分を保障するためのものだったり、様々な規定があります。
サンタに憧れを抱く者は、たくさんいます。
強すぎる思いが、サンタを傷つける結果を生むこともあります。そのため規定では、[サンタ個人へのファンレターに対して返信はしない]と定められているのです。
「手紙の主に会いに行く」というのは、明らかに規定違反となります。

「断る」

イザークの答えは、ミーアにとって予想の範囲内でした。
なので、攻め方を変えてみます。

「実はこれ、ただのファンレターじゃないのよ。ちゃんと、クリスマスに欲しいものも書いてあるの。あんた名指しで」
「なに……?」

同時に、イザークの脳裏に直前のミーアの言葉が蘇ります。
彼女は、「仕事を増やして良いか」と訊いてきました。

「俺は行かんぞ?! 時間にも余裕は無いし――」
「ニ、三件、緑に回しちゃえば良いのよ。彼女の元には、アンタしか行けないんだし……ほら、さっさと行きましょ」
「貴様も行くのか?!」
「だって、見張ってないと行かないかもしれないじゃない」

理不尽だ、とイザークは思いました。しかし、色々と足掻いてみたものの、結局イザークは――サンタホワイトは、ミーアの手によって連行されてしまいました。
手紙の主・シホの元へ。
シホの元へ向かう間、イザークはミーアから、シホについて色々聴かされました。

ミーアによると、シホはイザーク宛に、月数枚のペースで手紙を書き続けているそうです。
今日も届いたそうです。その手紙には、悩み事が書かれていたと言います。

「どんな悩みだ?」
「それは……あ、いた!」

説明しようとしたミーアですが、その視界に差出人を見つけ、話題は一瞬で切り替わってしまいました。


大きな川にかかる橋の上に、茶色く長い髪を裾野で結わえた少女がいます。一見するとおとなしそうで、なかなか整った顔立ちをしています。
気になるのは、その表情。まるで死んだような瞳で、彼女は川を眺めています。
サンタホワイトとなったイザークは、彼女から目を離すことが出来ませんでした。

何故でしょう。
何故か――彼女から、惹きつける何かを感じます。


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