「すみません。私、寝て……」
「ああ、良いよ。座ってて」

椅子から立ち上がろうとしたラクスを制し、サンタブルーはお湯を沸かし、ミルクティーを注ぎました。
カップは二つ。自分と、ラクスの分です。

「……ありがとうございます」

本来は、自分が用意するはずだったものを口に運びます。
浮かない顔で、憔悴しきった表情で。
サンタは、ラクスが心配でした。

「大丈夫? 寝たほうが……」
「いえ、大丈夫です。ただ……」

一瞬ためらったものの、ラクスは続けました。



「私に、一体何が出来ているか、と思いまして……」



それは、彼女がここのところ抱いていた「迷い」でした。
サンタは目を丸くします。予想もしなかった問いに、言葉を返せません。
ラクスは直も続けます。


「私は、多くの方々に……全ての方に[幸せ]を運びたいと思っています。けれど、私に、誰かを幸せにする力はあるのでしょうか」


ラクスは歌を歌います。
リサイタルを開き、メディアを使い、人々に幸せを届けようと活動しています。
[サンタdaファイブ]もそのためです。
ですが、時折思ってしまうのです。自分の力で、一体、どれだけの人に幸福を届けられるのか、不安になってしまうのです。
今回、ラクスが体調を崩したのは、ここにも原因がありました。


極度の疲れと、不安定な精神状態――……


「……大丈夫だよ、ラクス」

サンタはラクスの手を取り、微笑みました。

「君は、たくさんの人を幸せにしてる。これが、その証拠だよ」

次いで、サンタは袋から一つの箱を取り出しました。
ピンクの包装が施された箱です。それはラクスの手に渡されました。



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