その夜。 「七夕あいてるか?」 《うん》 突然話を切り出したにもかかわらず、ミリアリアは驚くほど素直にうなずいた。もっと色々反応があるのではないかと思っていたディアッカにすると、嬉しいような拍子抜けのような。 「実はさ、仕事でオーブに行くんだわ」 《仕事って……?》 「なんかさ、オーブで国際会議が開かれるんだと。数カ国で……正式議題まで聞かなかったけど、プラントも参加するんだと。その護衛」 《そっか……さすが軍人、危ない仕事しかこないわね》 「それが仕事だからなー」 あっけらかんと言うのは、ディアッカの癖だ。それは戦時下も戦後も変わらない。 ミリアリアに、要らぬ心配をかけさせないように。 離れてから、一層その思いは強くなった。 「ま、護衛任務なんてちゃちゃっと片付けちまうからさ、夜一緒に飯でも食わね?」 《それが、七夕なの?》 「そ」 《……七夕、なんだ……》 何故か口ごもるミリアリア。こんな反応をされては、さすがのディアッカも不安になる。 「……もしかして、問題ある?」 《ない》 彼女は要所要所で即答してくれる。 別に渋っている訳ではないらしい。 《待ち合わせ、どうしようか》 「待ち合わせ?」 《落ち合う場所決めないで、どうやってご飯食べに行くのよ》 「……だな」 自分がミリアリアの家に迎えに行く、という案も押したかったが、考えてみれば彼女の家なんて分からないし、聞き出すのもこう……苦労しそうな気がする。 「オーブで待ち合わせスポットって言ったら?」 《んー……護衛任務なら、大使館とか議事堂とか、近い場所が良いわよね?》 「おお」 《じゃ、あそこにしよう》 良い場所を思いついたミリアリアは、楽しげに言った。 《オーブ森林公園の入り口!》 |