こうして降りた、事件の幕。
だが、後始末はもっと大変である。
評議員や政府関係者に対する説明と釈明、調査員から受ける事情聴取etc、彼女が行なうべき事象は、数え上げたらキリがない。
それでなくても、重要会談の真っ只中に誘拐されたり、部下の不祥事が公のものになったり、機密漏洩が発覚したり……外交問題だけを取り上げても、タイミング的には最悪だというのに。

この事実だけを見るなら、『アスハ失墜』を掲げたケイマ・セト・マズルの思惑通りに事が運んでいるのだろう。


でも、彼の望む結果にはならない。


確かに大問題ではある。しかし、あえて自ら公表する道を選んだカガリの潔さは、国民の心をしっかりとらえた。
一番紛糾すると思われた内部からは、セイラン家を筆頭に、その全てがカガリの擁護に回っている。
それは政治的『思惑』があってのことだ。特にセイラン家は、ケイマの後ろ盾をしていた以上、『家』を失墜させないためには、擁護の側に回らざるを得ない。
自分達は関係ない。名前を利用されただけだ――と。

まあ……丸く収まったのだから、良しとしよう。
――今は。
国を乱し、オーブの政治的地位を堕落させようとした今回の一件は、逆に国内の結束を深める結果を生み出したのだから。
しかしカガリの胸には、言葉のナイフが刺さったままである。
無力な自分……そして周りの誰もが、自分の事を、ケイマと同じ様に捉えているのではないか、という恐怖で。

「大丈夫……よね?」

ミリアリアは問いかける。
彼女の横には、アスランがいる。テレビに姿は映っていないが、彼は今も、彼女の側にいるはずだ。
だからきっと……大丈夫、と。

それにしても。

「何やってるのよ、あいつ……」

しかめっ面で、彼女は時計を見た。いや、見なくても、正午過ぎなことは分かるのだが。

「今度はどれだけ待たされるのかしら」

つぶやき、ミリアリアは再び、テレビの中のカガリを見守った。

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