「……ディアッ……カ?」 ぬくもりを感じて、ミリアリアは不思議そうな声を上げた。 あんな遠く離れた所にいたディアッカが、今、自分を抱きしめている。 「つかまえた……」 それは低く、上ずった声で。 彼は存在を確かめるように、彼女を包む力を更に強めた。 「ようやく、つかまえた……っ」 ディアッカの声に引きずり出されるように、彼女もまた、小さく声を発する。 「……おそいよ……」 瞳に薄く、涙がたまる。 ミリアリアの瞳に。 ただ、自然と―― 「おそいぃ……」 「ごめん」 ディアッカは呻き、ゆっくり顔を上る。そして、ミリアリアの姿を目に映し……表情を変えた。 「お前、どうしたんだよ……これ!」 言いながら彼がその大きな手で触れるのは、ミリアリアの頬。誘拐犯に殴られ、赤く腫れてしまった頬だ。 「これは……何でもないの。ちょっと、転んだだけだから……」 「転んだ怪我じゃないだろ!!」 いらぬ心配はかけまいとついた嘘は、あっさり見破られてしまう。 「一体誰に……あの男か?!」 「あの男……?」 ディアッカの言う『男』が誰のことなのか分からず、ミリアリアは首をかしげた。 そこに、イザークの怒鳴り声が飛んでくる。 「おいディアッカ!! 何をもたもたしている!! 早くそこを離れろ!!」 天井パネルより二個分ほど離れた所から、彼は叫んでいた。 見れば、動き出したM1アストレイはとうとう立ち上がり、建物をすごい速さで劣化させている。仮避難施設となっている通路下も、そう長くもたないだろう。 「あー……これだから素人は性質悪ぃ!」 「素人?」 「あれに乗ってるの、ド素人なんだ! 名前は忘れたけど……あえて称するなら、影の薄すぎるラスボスってところか?!」 言ってディアッカは立ち上がると――同時にミリアリアも抱き上げた。 「――は?」 瞬間、彼女は自分がどうなったのか分からなかった。ただ、身体がふわっと浮き上がり……背中から腰にかけた部分と膝裏に、ディアッカの腕の温かさを感じ取り、ようやく把握する。 いわゆる『お姫様抱っこ』な状態であると。 |