声はとても小さいものだったが――

目を見張る。
それは遠く、格納庫の『一階』と呼べる場所。
放たれた先にいるのは、間違いなく、カガリとイザークとキラと……ミリアリア。

「ミリアリア!!」

思わず、ディアッカはその名を叫んだ。
探して探して、探し回った少女の名を。
彼の声が届いたのか、ミリアリアもまた、声を上げる。

「ディアッ――」

しかし――動き出した『ブラックフレーム』の機動音で、彼女の声はかき消されてしまった。
どういう操作をしているのか――立ち上がろうとしているはずなのだが、なぜか腕ばかりが動く。

「何したいんだよ、あのおっさん!!」

腕は他の足場を破壊。その上、引っかかった鉄筋が壁や天井にぶつかるおかげで、格納庫はどんどん破壊されて行く。

《くそおっ! どうしてちゃんと動かない!!》

コンソールから、ケイマの声が聞こえてくる。

「もう止めろ! お前の腕じゃ、それは動かせない!!」
《そんなはずあるかあっ! あのガキですら動かせるんだぞ?! なのになんで、どうして俺に動かせない!!》

アスランの説得にも、ケイマは聞く耳を持とうとしない。
あのガキ――多分カガリのことだろう。
彼女に出来ることが、自分には出来ない……それがひどく、悔しい。
ケイマは直も、ブラックフレームを操り続けた。

「まずい……このままじゃ!」

本当に、屋敷が崩壊してしまう。アスランはコンソールに向き合うと、恐ろしい速さでキーを打ち始めた。ブラックフレームには、幾つものケーブルが繋がったままなのだ。
これならまだ、こちらからも動きを制御できる。動力の強制停止さえかけられれば、あの機体は止まるはずだ。

「急げ、アスラン!」
「分かってる!!」

しかし、プログラムにロックがかかっているらしく、彼は苦戦を強いられた。

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