「あ! おい、アスラン……あれ!」
「!」

アスランが考えをめぐらせる中、ディアッカが監視モニタの一つから、ある人影を見つけ出した。
場所は格納庫。MS側のコンソールを、必死で動かす男がいる。

「あいつ、何やって……」
「あれは……ケイマ・センテグロ!!」

彼が何をしようとしているかなど、二人には分からない。
だが――放っておいて良い事態じゃないことくらいは判断できる。
二人は奥の扉を開け、格納庫へと飛び出した。
広い視野。
視線の高さでは、たくさんのMSの胸部が見える。
ここは、コックピットへの連絡通路らしい。

「そこまでだ!」
「っ……!!」

響くアスランの声に、ケイマはビクッと振り返った。

コックピットに直結する橋型通路の手前……多分、『ブラックフレーム』を整備するのに使うであろうコンソールを前に、ケイマは不敵の笑みを浮かべる。

「……ボディーガード殿の登場か」

言いながらも、足は数歩、後ろへ退かれる。
それは――開かれたコックピットの方へ。

「復讐劇も、これで終わりだな」
「……どうかな?」

にやり、とケイマは笑う。

「あのなー。お前が誘拐犯ってことは、もうみんな知ってるの」
「そんな所だろうと思ってたよ……わざわざ誘拐までして時間稼ぎをしたのに、全部仇になるとはな。堕落して行くアスハを間近で見ていたかったが」
「貴様っ……?!」

静かに、アスランの怒りが炸裂する。

「誘拐して、裏切って、しかも軍事機密まで流して!!」
「こちらとしても、驚いているんだよ。まさか保険に持ってきたものが、唯一の成功例になるとは思いもよらなくてね」

足を滑らせながら、ケイマは続ける。

「……機密漏洩は、大ダメージだろう?」


オーブにとって。
――アスハにとって。
それもまた、アスハへの復讐のためなのか。


「俺はお前達に捕まるつもりなどない。悪いが、そろそろ退散させてもらうよ」

言って――ケイマはコックピットへと走り出した。
『ブラックフレーム』を駆り、逃走を図ろうとしているのだろう。

「待て!!」

アスランは瞬時に銃の照準を合わせ――



カチンッ。



――銃は火を噴かなかった。
弾切れである。

「しまった……!!」

不覚にも、先ほどの戦闘で弾丸を使い切っていたことを忘れていた。自分の不甲斐なさに舌打ちをすると、アスランは銃をしまい、ケイマを捕まえようと走り出す。
方やディアッカは、彼が逃げ出した直後にダッシュをかけていたが、一足遅く、ハッチが閉まる。
そして――ケイマは『ブラックフレーム』を起動させた。
地響きと共に、足場が崩れ出す。

「くそっ!」

慌て、引き返すディアッカ。彼がコンソールの置かれる通路へと戻った瞬間、足場は大きな音を立てて崩壊した。
間一髪――と安堵した時だ。

「アスラン!」

突然、アスランとディアッカの耳に、少女の声が届けられた。

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