一方、戦場ジャーナリストとして、白兵戦を真の当たりにしたこともあるミリアリアだが、彼の動作には感嘆のため息しか出てこない。
それはカガリも同じ様だ。

「お前……実はすごい奴だったんだな」
「実は?」
「ああ、すまんすまん」

カガリの言葉が癇に障ったのか、イザークの眉が勢い良くつり上がる。彼女は慌てて謝っているが、眉間のしわの方は消えてくれない。
そんなほほえましいやり取りを眺めながら……ミリアリアはキラに話題を振った。

「……ところで、どうしてキラが、ここに?」
「議事堂で、二人がさらわれたって話、聞いて……それがちょうど、助けに行くところでさ。心配で、思わず付いて来ちゃった」
「……ありがと、キラ」

友人の優しさに、ミリアリアに笑みがこぼれ……ほぼ同時に、イザークが声を荒げた。

「ったく、何であいつらより、俺達の方が早く見つけてるんだ?」
「向こうは情報無い状態で探し回ってるんだし……」
「なら、こっちを無視して暴走した意味はどこにあるんだ!!」

キラのフォローにも、イザークの語調は変わらない。

「僕としては、『愛のパワー』で見つけ出してくれてると思ったんだけど……」
「何だ、その『愛のパワー』というのは!!」
「恋焦がれてやまない人を、本能で見つけるパワー?」
「……聞いた俺が馬鹿だった」

頭を支え、大きくため息をつくイザーク。
話が一段落したところで、今度はカガリが問う側に立った。。

「お前らが来たってことは……もう、この建物は包囲されてるのか?」
「いや、どっかの馬鹿二人が先走ったおかげで、俺たちは潜入班に祭り上げられてるだけだ。主力は……まだもう少しかかるかもしれない」
「馬鹿二人?」

ミリアリアが眉をひそめる。
もしかして、と思った。目の前にいる人物が人物だけに、高確率で起こりえる『予感』だ。
というか――あの二人しか思いつかない。

「アスランも来てるのか?!」

カガリも同じ事を考えたようだ。彼女は目を輝かせ、イザークに詰め寄っている。
そして、期待通りの言葉が返ってきた。

「ああ、アスランと……ディアッかも来てるぞ」

声はミリアリアに投げかけられた。
彼女は……うつむき、顔を上げることが出来ない。

ディアッカが……助けに来ている?

助けは来ないと割り切っていた。だから、自分達でこの事態を打破しなければならない、と心に鞭を打って、ここまで来て。

でも、ディアッカは来ている。

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