「だから、デートじゃないんだって!」

数時間後、ミリアリアの口から出た言葉は、カガリに向けたものと寸分変わらぬものだった。
他人に向けたものではない。自分に対しての叱咤、だ。
家に戻ったミリアリアが一番最初にやったこと……それはこれから着ていく服の選定だった。
デートじゃない。そう言いながらも、服には自然と気合が入る。

「…………」

言葉と同時にベッドへ叩きつけてしまった服を手に取り、もう一度鏡の前で合わせて。
髪型もちょっとだけ……ほんの少し、変えてみて。
アクセサリーを付け、香水で香りを整えて。

「……なんでこんなに頑張ってるのよ……」

出来上がった「ミリアリアさん・デート仕様」に脱力する。
嬉しかったのは事実。舞い上がったのもまた、事実。
会えること自体に喜び、しかも「七夕」という絶好のシチュエーションを考えると、どうしても心は高揚してしまう。


ディアッカから連絡があったのは、ちょうど一週間前になる。突然「七夕あいてるか?」と聞かれ「うん」と即答した。
何の迷いも無く、ただ会える事だけを期待して答えたのを覚えている。
この会話の流れで「ただ聞いてみただけ」なんて言い出したら、絶交宣言が飛び出そうなほど期待した。

そうしたら……七夕にオーブに来る、と。仕事だけど、夜には時間が作れるから、ご飯でも食べないか……と言われて。



「……デートじゃない、もん」


つぶやく。
自分に言い聞かせるように。
家の中でも、時間になって、待ち合わせ場所に行っても、ミリアリアは言い続けた。
違う違う、と自分への言い訳が響く待ち合わせ場所。しかしそれは、いつしか別の文句へと変わっていた。

「遅い」

――ディアッカへの文句へと。

目が据わる。
待ち合わせは七時。決して朝ではない。夜の七時なのに、時刻はすでに七時半を越えている。
送れるとも、行けないとも、何の連絡もよこしてこない。

「……何やってるのよ……」

言いながら、電話に目を落とす。

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