今日は7月7日。世間一般で言うところの「七夕」の日。
織姫と彦星が、一年越しに再会する日。
その日にミリアリアは、久しぶりにディアッカと対面する。カガリの言う通り「まんま」なのだが、自分について言われっぱなしというのも不公平じゃないか。
彼女は、意を決して反撃に出ることにした。

「……ねえ、ずっと気になってたんだけど、どうしたの? そのペンダント」
「ペンダント?」

言いながら、カガリの胸元に眼を向ける。そこには、いつもラクスの周りをうろついている球体メカ・ハロのミニバージョンが、宝石の様につけられたペンダントがある。
部屋に入り、姿を見た時から、それは目を引く存在だった。
ラクスは「ハロはアスランからの贈り物」だと言っている。ならこのペンダントも――

「ああ、この間、キラがくれたんだ。何だったかな……ハロ育成計画の試作品とかなんとか」


――なんだ、その「ハロ育成計画」って。

あっさり攻撃をかわされる。
ノド元まででかかったツッコミさえも抑え、反撃その二。

「……カガリは夜、どうするの?」
「マルキオ殿のところで七夕祭だ」

無意識ながら、カガリはミリアリアの攻撃を二度ともあっさりかわしてしまった。本日の彼女に、死角は存在しないらしい。
立場や身分の関係から、大っぴらに恋人的イベントごとを出来ないアスランとカガリ。てっきり、こっそりとでも七夕デートするのかと思いきや、何と健全な。


〈そういえば……〉


ふと、ミリアリアは思い出した。
マルキオ導師の元にはキラやラクスの他、小さな子供たちまで暮らしていることを。そんな所で七夕祭をするとなると、短冊はどれほどの量になるのか。
そこらに生えている笹じゃ、太刀打ち出来ない気がする。

となると今頃、キラはさぞかし立派な笹竹を求め、山の中を歩いているに違いなく……

「……キラも大変ね」

頑張れ、と心の中でエールを送りつつ、本音がつい口を飛び出す。カガリは何が大変なのか見当もつかず、疑問の言葉を出そうとしたが、全てを言う前に、首長室の扉がノックされた。
――もとい、首長室の扉がノックされ、一人の秘書が許可無く部屋に入って来た。
後ろではアスランやSP達がびっくりした表情で秘書を見ている。驚かないのは、穏やかな表情でスケジュールを調べている、もう一人の秘書だけである。

「な、何だ、いきなり!」
「取材時間はとっくに過ぎ去っていますので」
「だからって、返事も無く――」
「次の公務に差し支えます。あと十分で評議室入りしないと、会議に間に合いません」

カガリより頭一つ分背の高い秘書は、自分の行動理由と現状を的確に伝えていく。無断で押し入られた怒りも、その言葉が簡単に冷静なものへと戻してくれた。

「手間をかけてすまない。すぐ向かおう。……悪い、ミリアリア。話はまた今度、ゆっくりと」
「うん。頑張ってね」

彼女は、これから行われる公務の内容を知っている。
地球から数国、そしてプラントからも要人を招いての国際会議だ。

てそれこそが、ディアッカがオーブに来る理由なのだから――

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