「ディアッカもオーブにいたんだ……君も一緒に来る?」
「……悪ィけど、それどころじゃねーから」
「?」

笑顔でかけた声に返ってきたのは、とても冷たい眼差しだった。
キラと、のんびりお話している場合ではないのに――
ディアッカの中で、焦りが濃くなっていく。
一方、何も知らないキラは「え?」とアスランを見た。
彼もまた、余裕無さ気に説明する。

「……カガリがさらわれたんだ」
「ミリアリアも!」

追ってディアッカの叫びも入る。
キラは――驚き、アスランに詰め寄った。

「カガリとミリアリアが? どうして!!」

彼にとって、カガリは双子の姉、ミリアリアは大切な友達。
二人とも、かけがえのない存在なのだ。

「それは……」

負い目から、アスランは目をそむけ――その目が、猛スピードでこちらに突っ込んでくる、一台の車がとらえられた。
敷地内から、裏口に向かって走ってくる車の存在は、カガリ誘拐の瞬間を思い出させる。
目眩すら覚える中、車はアスランたちの横でぴたりと止まった。
黒塗りの窓が下げられ――


「貴様ら、走って追いかける気か!!」


――お約束通り、ジュール隊長の罵声が轟いた。

「イザーク、お前……」

信じられない、といった様子で、ディアッカが呻く。
これは……イザークが、車を回してくれたということだろう。

そう、車。
足ナシで、どうやってこの広い国を周ろうとしていたのか……これでは、さっきのアスランと同じことじゃはないか。
少しだけ冷静さを取り戻したディアッカは、嬉しそうにイザークを見る。
すると彼は、高々と言った。

「貴様らだけでは心許ないからな。一緒に行ってやる!」
「あ、じゃあアスランがナビしてくれっから――」
「何で俺がアスランのナビゲーションを受けるんだ!!」
「じゃ、お前、場所分かんのかよ」

半眼でイザークを見ると、彼は憤慨したように怒鳴りだした。

「さっき地図を見ただろうが」
「んじゃ、そこまでの行き方は?」
「貴様……俺を誰だと思っている?! 任務で来ているんだぞ? いつ何時、どんな非常事態にでも対応できるよう、国の地図など全て頭に入れてあるわ!!」
「――さっすがジュール隊長!」

素晴らしすぎるイザークの仕事っぷりに、途端に笑顔全開になったディアッカは、我先にと車に乗り込む。

「いらない手間が省けるな。今回ばかりは、お前が執念深くて助かったよ」
「何ぃ?! 俺のどこが執念深いんだ!!」

続いて後部座席に乗るアスランに、イザークは非難の声を上げ、

「僕も行くよ!」
「〜〜貴様は誰だっ!!」

問答無用でアスランの隣に座るキラを見るや否や、これまたジュール隊長の雄叫びが、車外にまで響き渡るのだった。



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[〜恋々〜]


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