七月七日。七夕。
織姫と彦星が会える日。
そんなロマンティックな日に、この仕打ちはないだろう……とミリアリアは思った。

変な男達にさらわれ、追っ手がいるのか、車の運転はとてつもなく荒い上に猛スピード。
気分は最悪だ。


〈これも全部ディアッカのせいよ〉


ミリアリアは全てをディアッカのせいにしていた。彼がちゃんと待ち合わせ場所に来ていたら……せめて連絡の一つでもよこしていれば、議事堂に行ってカガリと二人っきりになることも無かったし、こんな誘拐劇が起こる事も無かった。

だから、ディアッカのせい――

そう思わないと、どうにかなりそうだった。
彼女は自分の立場をよく理解している。
これはカガリを狙った誘拐なのだ。狙いが何かはまだ分からないが、目的が何であれ、連れ去るのはカガリ一人で良かった筈。
つまり……自分はおまけなのだ。利用価値さえなくなれば、命すら危ういかもしれない。

たとえ利用価値があったとしても――屈辱的行為を受ける覚悟は、しておかなければならないだろう。
誘拐犯は、ガラの悪い四人組の男なのだから。

「すまない、ミリアリア……私のせいで」

小さくカガリが謝る。
しかしミリアリアは首を振った。

「カガリのせいじゃないわ」
「だが」
「おーおー、この状況で仲良く世間話か?」

話の最中、男が一人、近づいてくる。
下種な笑みを浮かべて。

「ところで可愛い代表さんよ。ちょいと携帯貸してくれないか? お偉いさんと交渉したいんだが」
「何の交渉だ」
「もちろん、身代金交渉だよ」
「…………」

カガリは一瞬迷ったものの、素直に携帯を差し出すことにした。
自分ひとりなら抵抗したかもしれない。しかしここには……ミリアリアも一緒に居る。下手な事をして、彼女をこれ以上の危険に晒す事だけはしたくなかった。
彼女は内ポケットを探り――

「……ん?」

――顔をしかめる。

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