運命の再会



「詳しい事情は良く分からないんだけど、私を使って、カガリに何かさせたいみたい」
「……カガリ・ユラ・アスハに?」

呟くディアッカの顔が、真剣なものに変わっていく。

「……どんどん、話、大きくなってんな……」

我知らず、呻くディアッカ。彼は壁を眺めながら、ぶつぶつと独り言を紡いでいく。
その姿を見た瞬間、ミリアリアの世界から、音が消えた。

「武器商人に始まって、Lシステムにオーブ……何考えてんだ? あのおっさん……」

小さいとは言え、十分聞こえる距離の声。
けど、ミリアリアには届かない。
間近で、久々に見るディアッカに、目が奪われて。
それだけになってしまって。

「とにかく、一旦出て――」
「髪、伸びた?」
「――…………は?」

突然話が切り替わり、ディアッカの頭は、彼女の放った言葉の内容を認識できなかった。
簡単なことなのだが。


カミ、ノビタ?


と言う事は。


髪が、伸びたか、と訊かれているわけで。


「……それ、今、関係ある?」
「関係なかったら、訊いちゃ駄目?」
「え? や、そんなこと無いけど……言われれば、結構伸びたよな」

突拍子も無い話題転換に戸惑いながら、とりあえず、ディアッカは答える。

「伸ばしてるの?」
「伸ばしてるっつーか……うん。願はかけたけど」
「どんな?」
「良いことありますよーにって」
「随分アバウトな願ね」
「ついでに、もう一度お前に会えますようにって」
「!」

どくん、とミリアリアの心臓が跳ね上がった。
ギュッと膝を抱え、平静であろうとしながら、彼女は悪態をつく。

「な……な、なによ……その、ついでって……」
「見込みが無いから、ついでにしたんだよ」

フッと笑い、ディアッカは重い腰を上げた。
まるで「この話はここでお終い」と言わんばかりの態度に、ミリアリアの苛立ちは募っていく。
置いていかれるような焦燥感。
置いていかれる悲しみ。


どうしてそんなこと言えるの?
なんでそんなこと言うの?


「……見込み無いって……何よ」
「思い出話は今度にしようぜ。ここ――」
「できないっ!!」

叫び、ミリアリアは立ち上がった。
さすがのディアッカも、眩暈に襲われる。

「いや、できないじゃなくてさ……」
「できないわよ! 出来るわけ無いじゃない!! 何よ、見込み無いって。私、馬鹿みたいじゃない!」

分かっていたのだ。
こうなるから、会いたくなかったのだ。出来れば、会わずにプラントを去りたかった。
けど、同時に――会いたかった。

目元を拭い、溜めにためていた思いをディアッカにぶつける。


「期待、してたのにっ……」


その言葉に、ディアッカの目は丸くなる。


「あんたが迎えに来てくれるって……期待してたのにっ……!」
「……あのさ、ミリアリア。一つ、訊いて良いか?」

涙すら零し始めたミリアリアに、ディアッカは、優しく問いかける。



「確か俺――フラレたんだよな?」





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