運命の再会



「あれは……」

ディアッカを直視できなくなり、顔を背け、彼女は低く呻いた。

「あれは、あんただったから……」
「俺?」
「そうよ。あんたにシン君を攻撃してほしくなかったし……あんたが討たれる姿も、見たくなかったから……」

はき捨てられる言葉に、ディアッカの心臓が大きく脈を打つ。

「……もしかして、俺も、守ろうとしてくれたの?」
「いらない心配だったと思うけど――」


――ごうんっ。


その瞬間、ミリアリアの言葉をかき消すように、何かが動く大きな音が、格納庫に響いた。
同時に、彼女の目が見開かれる。それはディアッカの背後、シンとレイに倒されたMSのハッチが開けられた音だった。
続けざまにハッチが開き、中から身体をふらつかせる警備員達が姿を現す。見たところ、外傷らしき物は無い。撃墜された衝撃で、気絶でもしていたのだろう。

「……ったく、良い所で……」

舌打ちと共に、ディアッカはミリアリアの手を掴む。

「え? なに?」
「決まってんだろ!」

警備員の機関銃が二人に向く。しかしその火花が散る前に、ディアッカの銃が、それらを弾き飛ばした。
手を引きながら、叫ぶ。


「逃げんだよ!!」
「逃げるって、どこに――」
「とりあえず、あいつら撒いて、落ち着ける場所!!」


格納庫を出、二人は走った。入り組んだ道を、右へ左へ。途中、カンパニーの人間と遭遇しながらも、何とか隠れられそうな部屋を見つけ、そのまま逃げ込む。

「ったく、イザークの奴! 人員増やせっつったのに……いつ増員すんだよ!!」
「……ねえ、ほんとに、あんた……何の任務でここにいるのよ……」
「極秘任務!」

言ってディアッカは、中から鍵を書ける。これでしばらくは、時間を稼げるはずだ。

「あー……つかれたー…………」
「体力勝負の人間が、何言ってるのよ」

息も切れ切れに、二人は扉に背を預け、腰をおろす。
もとい――へたり込む。
明かりの無い空間に、二人の呼吸を整える息遣いだけが響きあい、訪れるのはおかしな緊張感。先ほど、銃を向け、向けられの時には全くなかった張り詰める空気に、二人は支配されていった。


小指だけが触れ合う距離で。


「……なあ」
「……なに?」
「真面目な話、どうしてデュッセルカンパニーの倉庫なんかにいるんだ? お前、分かってんだよな? 奴らが犯罪集団だって」
「てことは、会長を捕まえに来たんだ、あんた」
「――――」


ミリアリアはニヤリと笑い、ディアッカは「しまった」と顔をゆがめる。
極秘任務と一刀両断にした割に、数秒後にはバレてしまっては、意味が無い。何とか取り繕うと頭を悩ませていると、ミリアリアが覗き込むように言ってきた。

「あんたって、時々抜けてるわよね」
「良いだろ、別に。ほら、こっちはばらしたんだから、お前も教えろよ」
「自分の失態でしょ?」
「ぐ……」

反論のしようが無い。
悔しがっていると、その姿にミリアリアは小さく吹き出してしまう。
そして、ご褒美とばかりに言ってのけた。

「私はただ、巻き込まれただけ」

ディアッカを見ず、天井に目を向けて。


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