天使の導き


〈シンはそんなこと、おもってないよ〉



後ろから抱きしめられる様に、柔らかな温もりを感じる。
そこには、誰もいないのに。



〈シンは、みんなを、まもりたかった、だけ〉



涙が零れる。
忘れられない、声。
この三ヶ月、いつも心の中で、夢の中で、勇気を与え続けてくれた声。ルナマリアやメイリンに会いに行こうと思ったのだって、夢に彼女が現れたから。
動く勇気をくれた。



自分を――助けてくれた。



〈そんなに、じぶんを、せめちゃ……だめ〉
「ステラ……」


冷たい水の中に消えていった少女の名を、シンは紡ぐ。
海が好きだった彼女を、水の中に還したのは自分。
この場に彼女がいるはず無い――声が聞こえるはずもないと分かっていながら、響く声に喜びを覚える。
自分を包むぬくもりに触れようとする。
でも、これは幻だから。
自分が……きっと自分の都合の良い様に創り上げた、まやかしだから……

ぬくもりは空気となり、触れるのを拒む。


〈シンは、ステラをまもってくれた〉


言われても、シンには理解できなかった。
守ってなんか、ない。
結局――見殺しにしてしまった、という思いが強すぎて。


〈あのヒト、まもった〉


なおもステラは言い続ける。


〈あのヒト、いってた。まもってくれてありがとう、って、いってた〉





――守ってくれて、ありがとう――





ステラに導かれ、シンの脳裏にミリアリアの声が蘇る。
まるで魔法だ。
あの一言で、シンはどれだけ救われたか――……


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