歯車の噛み合う時


「カメラをよこせ!!」
「きゃああああっ!!」
「!!」

恐ろしいほど速いスピードで捕まったミリアリアから悲鳴が上がり、そのせいか、少年の足も止まった。
振り向くと、恐怖に怯える少女の姿。それは少年の心に、たくさんの苦しみと悲しみを思い出させた。


どくん。


心臓が悲鳴を上げる。


このまま逃げてしまえ。
そう囁くは、自分。

早く助けろ。
そう囁くも、自分。


でも、自分には誰も守れない。守りたくても、傷つけてしまう――


「やめて、離してぇっ!!」
「――!!」

葛藤に苦しむ少年を現実世界に引き戻したのは、やはりミリアリアの悲鳴だった。

助ける? 助けない??

そんなことを考えてる余裕は無かった。
考える前に――身体が動く。

「――ぁああああ!」

咆哮が轟き、ミリアリアが、男達が、ハッと少年を見た。
逃げようとしていた少年が、こちらに走り込んでくる。


目を、鮮血色に染めて。


「なん――!!」

少女を救おうとした無謀な行動と、誰もが思った。現に男は、少年のタックルを簡単に避け、その背中に一撃を振り下ろす。
しかし少年が、それを受けることは無かった。彼は瞬時に身を翻し様、なんと男に足払いをかけ、まんまと転ばせてしまう。

「何だ、こいつ――」

驚愕の眼差しを向ける間に、少年はどんどん、男達を倒していく。

「こっち!」
「え――」

数秒――それは本当に、数秒の出来事だった。わずか数秒で男達を倒した少年は、唖然とするミリアリアの手を引き、公園を飛び出した。

「ちょ、きみ、速っ……」
「――あ!」

どれくらい走っただろう。ミリアリアが音を上げたところで、少年はようやく足を止めた。

「すみません……」
「大丈夫、これくらい……」

言いながらも、ミリアリアの息は切れ切れである。


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