天使の導き


シンはレイ達と合流しようとしたが、カンパニーの警備員は物騒なことに機関銃を所持していたため、舌打ちと同時にMSへと走った。間髪入れず、銃口が火を噴く。

「やめて! シン君!!」
「下手に動くな」
「でも!」

ミリアリアを制するレイの目は、シンを捉えず、一機のMSに注がれていた。
レジェンドのフォルムに。
あの警備員達は、シンを見つけたことで頭が一杯になり、自分達の存在に気付いていないと思われる。


都合が良いかもしれない。


「こっちだ!」
「ええっ?!」

警備員の目がシンに奪われているのを好機と見、レイはミリアリアの手を引いて走り出す。
一方、シンは完全に身動きが取れなくなっていた。

「っとに容赦ねーな……」

呟き、シンはレイ達へと目を向ける。しかし、絶え間なく鳴り響く射撃のおかげで、格納庫は白い煙に包まれていき、しっかり二人の姿を見ることが出来ない。
いや、今となっては人影すら捉えられない。もし相手がこちらに飛び込んできたら、どう対応すれば良いのか――……と、頭を悩ませた時だった。
上空に、閃光が走る。
二つの光が輝き、格納庫を振動が襲い……



「……レイ?」



我知らず、シンは呟いていた。
起動する音。
動き出す巨体。
その名は――レジェンド。

「な、なんだ?! なぜレジェンドが――」
「まさか、レイが――」

叫びと同時に、レジェンドの腕が、一機のMSの腕部を破壊した。
戦慄が走る。
彼らは瞬間的に悟った。レジェンドに乗っている人間は、自分達にとって「敵」に当たると。


「レジェンドを奪われるな! MSを守れ!!」


武器を手にしたまま、彼らも近場のMSに乗り込み、レジェンドに応戦を始める。
それは、シンも。
彼もまた、導かれるようにデスティニーへと向かっていた。
狭い格納庫で、力を制限しながら戦うレイを援護しようと、考える前に身体が動いていた。
とにかく、レイを助けなければ――……そう考えながら、ハッチを開ける。
三ヶ月前と変わらない座り心地。
変わらぬ香り。
自分が乗った、最後の機体……



「……あれ?」



起動させようとスイッチに伸ばした指が止まる。
本能が思い出した。
これは、この機体は、人の命を簡単に奪えるものなのだと。


「……っ!」


思い出さないようにしてきた光景が、頭の中に広がっていく。
目を背けてきた過去が、容赦なく襲いかかる。


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