天使の導き 「何なんだよ、これ……」 その時、シンは戦々恐々としていた。 突然敷地全体にアラートが鳴り響き、それまでのんびり作業していた者達は、突然スイッチが切り替わったかのように世話しなく動き出す。 その内、パイロットスーツを着た人間が格納庫らしき場所に続々と入っていき、大きな機械の動く音が聞こえてきて……見つからないよう、こっそり中を覗き込めば、数え切れない人々が次々と、山のように押し込められたMSへと乗り込んでいく。 シンは目を見張る。 どんどん姿を消していくMS達。それはまるで出撃シーンのようで―― いや、これは出撃だ。大量のMSが、戦いの地へと向かっている。 「……何、が……」 何が起こっている? 何のために、デュッセルカンパニーで生み出されたMSが、宇宙へと飛来するのか。分からないが――確実に何かが起きつつある。 数分経たず、格納庫からは人の気配が消えた。残されるのは数機のMSだけ。 その姿に、シンは意識を硬直させた。 わなわなと震え、しかししっかりとした足取りで、自らの目を奪う機体へと足を進める。 灰色の機体。 色を奪われていても、見間違えるはずの無い機体。 デスティニーガンダム、そして、レジェンド―― その時、遠くの方で扉が開いた。条件反射で身を隠すシンの心臓は、突然訪れたデスティニーとの再会と侵入者の存在で、強烈な速さで鳴り響く。 落ち着こうと呼吸を整えるが、聞こえてくる声が、それを許してはくれない。 「ぐずぐずするな!」 ――この声は―― 室内に反響する声は、捜し求めた声だった。 「これでも一生懸命走ってるの! それより、このアラート何?!」 「気にするな。ただ出し抜かれただけだ」 男女二人組の声。 その声に、シンの心は高ぶっていく。 「出し抜くって、誰が?」 「多分――」 「――レイ!!」 たまらず、シンは飛び出した。彼の登場に、目の前の二人も身体をびくんと跳ね上げる。 「シン君!」 歓喜の声を上げるのは、ミリアリア。 そう、格納庫に入ってきたのは、レイとミリアリアで―― 「いたぞ、侵入者だ!!」 再会したのもつかの間、背後からデュッセルカンパニーの警備員が現れた。 |