天使の導き







「意外と手間取ったな」

愚痴を零しながら、わずか数分で本社の機能を停止させたイザークは、会長室のパソコンを立ち上げていた。
会長室=ライドンの部屋。この場にライドンがおとなしく座ってくれていれば楽も出来たのだが、残念ながら別の場所へと移動してしまったらしい。昨日の夜から、本社から出た形跡は無い。となると、地下倉庫、あるいは……
考えながら、モニタに映し出される資料を漁っていく。彼の目当ては『Lシステム』の詳しい情報と、ロゴスについての資料、そしてドゴラとの因果関係を示す証拠だ。
――と、インカムに呼び出し音が響く。発信者は、ディアッカだった。
彼は今、隊員や他の小隊の人間と共に、カンパニーの地下・外郭に位置する物資置き場を探索している。

「ディアッカ、どうだ? いたか?!」
《いや、いねえ……ったく、どこ行ったんだか……》
「何をやってるんだ! 早く捕まえろ!!」

間延びした返答に、イザークは簡単に切れてしまう。
しかし、ディアッカにも言い分はあった。

《何で俺が怒鳴られんだよ! 俺、何も悪くねーじゃん!! どっちかってーと、ヤナックの方が――》
《うわ、ちょっと先輩! 人に変な火種向けないで下さいよ!》
「無駄口叩いてないで、さっさと探せ!!」

こんな非常時に、なんでこの二人は楽観主義を貫くんだ……
イザークは頭を抱えた。

「……貴様、まさか『いない』という報告のために、わざわざ通信かけたわけじゃないだろうな」
《いや〜、ちょっと人員補充の要請を》
「分かった」

一言告げ、通信を切る。焦る気持ちを落ち着けようと深呼吸をし、目の前のパソコンを見た。
大丈夫。あれであの二人は優秀だ。
そう、考えて。

「……これか」

イザークは見つけた。
『Lシステム』の詳細を記した資料を。





星々の輝く宇宙にも、ザフトの姿が散りばめられていた。
暗い闇の海は、苛烈なる光の構成を創り上げていく。
デュッセルカンパニーの外郭倉庫を中心に。


「教官……」


エルザに乗り、戦闘配備に着くルナマリアは、ただ戦闘にならないことだけを願った。
彼女達がここに配備されたのは、ライドンの逃走経路を押さえるだけではない。彼は海賊旅団と繋がっている可能性がある。


もっと突っ込んだ言い方をすれば、彼の会社そのものが、海賊旅団と密接な関わりをもっている確率が、極めて高い。


この外郭倉庫ですら、海賊団のアジトの一つと考えられているのだ。
だからこそ、何事も無く終わってほしい。
しかし、その願いは叶わなかった。
ドックから、機影が生まれる。

大量の、MSの機影。


「教官っ……」


悔しげに、唇を噛むルナマリア。
だが、それだけでは終わらない。


《気をつけろ、後ろからも来てる》
「え?!」


ルタに注意を促され、ほぼ同時に、後方から迫る大きな熱源体を感知した。







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