生きるための選択







「久しぶりだな、その格好」
「そうですわね」

髪を結い、エターナルに乗っていた頃愛用していた陣羽織を羽織るラクスと、ボディーガードのように傍を離れないアスランは、プラントの中央広場にある時計塔・最上層にやってきていた。二人の周りには、彼らを囲むようにSPが付き、少し離れたところには、評議員の姿もちらほら見える。
この場に、一般人は皆無。

この時計塔こそが、ラクスの『審議』の場なのだ。数時間と経たずして、ラクスはその処罰を決められる。

「穏やかな天気ですわね」
「今日は一日晴れだからな」
「本当に皆さん、楽しそうですわ」

時計塔の前は大きな広場になっていて、今日も家族連れやら友人間の遊びやらで、外の雑踏が耳で捉えられるほどの賑わいぶりだ。

「外を見ては、いけませんか?」
「だめだ」

アスランはラクスの申し出を一蹴する。

「気付かれたら大混乱だろ。印象が悪すぎる」
「評議員の方々の? それは無いと思いますけど……」
「駄目だったら駄目だ」
「分かりました」

くすくす笑いながら――ラクスは突然、話題を変えた。

「良いのですか? こんな所にいて」
「これが俺の仕事だ」
「そうでしょうか……例の作戦、そろそろ始まるのでしょう?」

見上げるラクスを見据え、アスランは言い切る。


「俺は、ラクスを守るためにいる」


真剣な眼差しで。
有無を言わさぬ威圧感を込め。
だが、ラクスには通用しなかった。


「言う相手が違うのではないですか?」


あっさりと。
至極あっさりと、アスランに切り返す。

「……茶化さないでくれ」
「私は至って真面目です」
「君は今から審議にかけられるんだぞ? それを、こんな――」
「恋愛話は、不謹慎だとおっしゃりたいのですか?」
「当たり前だ!」

声を荒げるアスラン。しかしラクスは冷静だった。

「緊張感は無いのか?!」
「ありますわ。ですから、リラックスしようと思いまして」
「は?!」
「アスランと、他愛無いお話でもしたら、少しは緊張がほぐれるかと思いましたの。カガリさんの話も、久しく聴いていませんし」

アスランの手を取り、ラクスは尋ねる。

「連絡、取ってないのでしょう?」
「俺達は、別々の道を歩くと決めたんだぞ? なのに今更……」
「大切な友と、連絡を取るのもいけないのですか?」

手にこもる力が増した。
不思議そうな問いかけの奥に、非難めいたものを読み取る。


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