生きるための選択



「……俺がお前を逃がすとでも思っているのか?」
「逃がすんじゃない。一緒に逃げるのよ」

今度は、ミリアリアが言い切る。

「一緒に逃げよう」
「……笑い話にもならないな」

大きく息を吐き出し、レイは言う。

「変な計画に俺を巻き込むな。お前を助けた所で……」
「私のためじゃなくて、シン君のために逃げよう? シン君、絶対心配してるよ」
「それこそ残念な話だが、シンはこちら側についた」
「……は?」

思わず、ミリアリアの口が開く。
冗談にしては笑えない話を、それでもレイは淡々と続けた。

「シンも、ギルの目指した世界をの創造を願っている。今は会長の下で働いて――」
「ちょっと待って! それ、誰が言ったの? シン君??」
「会長だ」

言葉を打ち消され、レイは少し、不機嫌な顔をする。
しかしそれ以上に、ミリアリアの剣幕が凄かった。レイの機嫌などお構い無しに、弾丸のようにまくし立てる。

「本気で言ってるの?! そんなの、嘘に決まってるじゃない! シン君、戦うことに怯えてたのに……すごく嫌がってたのに、それをまた戦いの舞台になんて……。もし本当に、ライドン会長の下についたって言うなら、それは私やレイ君がいるからだわ! 人質がいるから――」
「いい加減にしろ!」

たまらず、レイは声を荒げた。

「何故お前は、そうもシンと俺に良好な関係を求めるんだ!」

言われ、ミリアリアの心に、すうっと冷たい空気が流れる。
同時に――怒りがこみ上げた。



「……いい加減にするのはそっちよ!」



胸倉を掴み、ミリアリアはレイをベッドに押し倒す。
そして叫んだ。

「どれだけ卑屈になれば気が済むの?! そろそろちゃんと、現実を見なさい!!」

突然怒鳴られ、レイは唖然とする。

「どれだけ、シン君の想い否定したら、気が済むのよ……」
「シンの……想い……?」
「シン君がどれだけ君を大事に思ってるか、知ろうともしないで……」

悔しい。
すごく悔しい。
あんなに心配してくれる人がいるのに、それを遠ざけようとするレイの姿が、とても悔しくて、気付くとミリアリアは涙ぐんでいた。

「君は……」

彼女は問う。



「君はそんなに、シン君の事、どうでも良いの……?」



頬に雫を伝わせて。





「君はどうして、会長の手助けをしようと思ったの?」







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