生きるための選択







格納庫に入るなり、ルナマリアは足を止めた。活気がある、と言ったら怒られそうなほど慌しくて、いるだけで息が詰まりそうになってしまう。
それほどみんな、急いでいた。ミッション開始まで半日を切っている。なのにまだ、修復されたザク改良機[エルザ]の最終調整が終わっていないのだ。
[レベッカ]に至っては、未だ修復途中である。

「間に合うのかな……」
「間に合わせるのが、プロってもんさ」

エルザを見守るルナマリアの隣には、いつの間にかヤナックが立っていた。
彼を横目で見ながら、ルナマリアは小首をかしげる。

「……ヤナックさん、MS乗りませんよね? 今回」
「まあ、念には念を込めて。もしかしたら、宇宙に借りだされるかもしれないし?」
「はあ……」

あまり納得してないが、彼女は仕方なく頷いた

「……けど、レベッカは微妙だな」

ヤナックの目が、修復途中のレベッカを捕らえる。エルザと違い、レベッカは容赦なく破壊されている。それをこの短時間で、ここまで直したのがまず凄い事なのだ。
一週間前の姿を見た人間なら、この修復具合は奇跡と感じるかもしれない。

「こりゃ、最後の最後まで登場しなさそうだな。美味しいとこだけかっ攫うかもしれねーぞ?」
「レベッカじゃなきゃ、駄目なんですか?」

不思議に思い、ルナマリアは訊いてみる。

「エルザにしてもそうですけど……システムが必要なら、他の機体に登用すれば――」
「それが出来ればとっくにやってるんじゃないか?」

返ってきたのは、単純明快な答え。
それ以上は無い。多分、ヤナック自身も知らないのだろう。彼だって、軍人としてルナマリアの先輩にあたりはしても、この機体に関しては素人も良い所だ。彼女の方が、よく分かっているとも言える。

「ま、あの二機が『Lシステム』を停止させる術を持っているんだ。なら、使うしか無いだろ?」

『Lシステム』。
正式名称=不明。略式名称で呼ばれている一番の要因が、これである。ギルバート・デュランダルの残した資料から判明したシステムの正体は、ひとたび発動すれば、地表の半分も焦土と化せるほどの強力な兵器なのだ。今もまだ、兵器の姿を隠し、宇宙を漂っている。
そしてルナマリア達の今回のミッションは、この『Lシステム』の破棄である。



Lシステムを守っているのは、ライドン。



作戦会議の際に聞かされた情報を思い出すと、ルナマリアはやるせなくなった。

「……私、やっぱり信じられません。教官がそんな物を所持しているなんて……」
「教官じゃない。元はギルバート・デュランダルの所有物だ」


ヤナックが言い切って。
ルナマリアは……身体を少し、震わせた。
顔がどんどん青ざめていく。
その姿に、ヤナックは目を細めた。


「……もしかして、未だに議長妄信派?」
「そんなんじゃありません」

続いて、ルナマリアも断言する。





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