大切な人のために それは、無防備にも通路で交わされていた。 エターニアにメイリンの様子を見に来たミリアリアは、ブリッジに向かう中、偶然その会話を耳にしてしまう。 「ねえ、あのレジェンドのパイロットって……」 「レイか?」 「……名前までは分からないけど……彼、ラウ・ル・クルーゼと、何か関係あった?」 「何か……?」 訝しげるアスランに、キラはやんわりと、遠まわしに尋ねていた。 「例えば、クルーゼ隊に少しの期間いたとか……あの人に縁のある人間、とか……」 「いや、俺がクルーゼ隊にいた頃は、まだ学生だっただろうし……隊長の知人関係までは把握して無いな……」 「そっか……」 「……?」 声を落とすキラに、アスランは不可思議な感情を抱き始める。 今になってクルーゼを気にする理由が、彼には分からなくて。 「どうしたんだ? いきなり、隊長のことなんて」 「何でもないんだ。ただ、ちょっと……彼と戦い方とか、似たところがあったから……」 「まあ、師事した人間が同じなら、戦い方も似ると思うぞ?」 「そう……だよ、ね……」 キラが目を伏せる。 「……キラ?」 「うん。そうだね。ごめん、変なこと訊いて……」 その瞳は、納得していないものに見えた。 けど、今から考えると……違う。納得するとかしないとか、そんな時限の話じゃない。 キラもきっと、自分と同じ結論に達したのだろう。それを覆したくて、最後の望みをかけ、アスランに話を振ったのだと思う。 ピースがはまっていく。 色々な情報が、ミリアリアの中で収束していく。 ラウ・ル・クルーゼは、クローン体。 ギルバート・デュランダルは、遺伝子学の権威。 レイは、デュランダルを敬愛している素振りがある。 そんな彼に、面影を見る人物。 今なら、はっきりその姿を見ることができる。 ムウ・ラ・フラガ。 デュランダルとフラガ家の間に繋がりがあれば、この三者は「遺伝子」という単語でつなげることが出来るのだ。 ミリアリアは机の引き出しを探った。 彼がそうなら、必ずあるはずだ。 あの「薬」が――…… 「――――」 二段目の引き出しを開けたところで、手が止まる。 本と見比べても、遜色ない姿。間違いなく、あの「薬」だ。 分かりやすく言えば……老化防止。 クローン特有の発作を抑える薬。 ミリアリアも、確信した。 キラの出したものと、同じ確信。 レイが、クルーゼ同様、アル・ダ・フラガのクローンであると――…… |